きらきら、ふるふる、甘くもありちょっぴり苦くもあり。
- ★★★ Excellent!!!
誰も真似できない、個性的な語り口や文体というものがあるけど、この作者さんの語り口もそうで、その雨上がりの水滴のようなきらきら、ふるふるした雰囲気、色彩が浮かび上がってくるような繊細な情景描写・心理描写は、オンリーワンだなあ、と拝読させていただいている。
で、読んでいくうち影響されて、自分でも心の中で「みゅー」とか「にゃー」とか呟いてみたりするけど、私が口に出して使ったり書いたりしても、全く似合わない。みゅー。
この「スプーンと時雨」、最初はユリユリした可愛らしい話だと思っていたが、次第に主人公の結花とその周囲の人々が多角関係を形成していき、それと同時にいいままで隠れていた秘密も現れ、それは結花のこころを揺らし、ある時は喜ばせ、またある時は苦い味を思い起こさせながら、結末へと向かっていく。
柔らかな文体だけれども、登場人物の発する言葉は時々鋭くて、痛い。きらきら、ふるふる、に浸っていると、いきなりこちらに刺さり、どきりとする。
ラストの「リボン」に、彼女はそういう役割だねえと頷き、満足して物語を読み終えた。
〔追記〕上記の他にも読みどころはいくつもあって、例えばお料理や飲み物の数々の描写。カフェのメニュー、結花の故郷の徳島の郷土料理などなど……読んでいると食べたくなる、飲みたくなる。飯テロ小説の可能性も秘めている。恐るべし。