2篇「かみくらい」
※ ※ ※ ※ ※
――天使!
紛うことなき、天使様。
ああ、ボキャブラリーが足りない。
そして、何よりも実体験として他人を褒める謙虚さが圧倒的に足りない。
いや、だが確かに、天使なんだよ、それが。
そりゃそーだろ。
こんな訳の分からない俺みたいな外人、と云うか、異世界人掴まえて声掛けてきてくれるんだから、もうそれだけで十分、天使、大天使。
この世界の女性は何人も
と云うか、別次元。
そう、例えるなら、1個下の二次元!
いやいや、違うか。
白髪。
いやいや、白髪じゃねーや。
銀髪?
プラチナブロンドってヤツなのかな?
超キレイなロングヘア。
両サイドは三つ編みにして前に垂らし、後ろは超ロングのダブルウルフ。
薄いスミレ色の瞳は、やたらと神秘的で吸い込まれそう。
そんな事よりなにより、もう透明感が爆発し過ぎてる。
ロシア人?ウクライナ?ベラルーシ?
北欧なのか?
なんかこう、キレイ過ぎて
いい匂いしそう。
――スーハー、スーハー
うん、苦しゅうない!
フローラル!
本当に、すっげーいい匂いするじゃねーか。
どうなってんだよ、ほんと。
ご褒美じゃねーか。
「ਸ਼დะ₪フ☆Å›ゃജਊێĮზ√にょ」
あ、話し掛けられた。
…やっぱ、なに云ってんのか、サッパリ分からん。
アレ?
でも、最後の
“にょ”って聞こえたよな?
“にょ”って。
――あーー、もぅ、かわいい!
ん?
目を閉じて、なんかゴニョゴニョ云い始めたぞ?
なに、なに?
どうしたんだ?
独り言にしては、ちょっとデカめで、見守るこっちの方が若干、焦るんですけどぉ。
「…………かる?」
「…?」
「………分かる?」
「!?」
「これで分かる?」
「おおっ!分かる分かる!」
「そう、よかった」
――うおおおおおーッ!
かわいい!
じゃなかった。
純粋に嬉しいぞ、コレは。
こっちに来始めてどれくらい経ったか分からんけど、やっと初めて、
ずっと喋れない、っつーか、会話が成立しない状態が続いていたから、もう苦痛だった。
いや~、それにしても、会話って、想像以上に大事なんだな。
本当、嬉しい。
それに、かわいい!
あまりにも美人さん過ぎて、ちょっと遠い感じがしたけど、なんて云うか、喋れると凄く親近感が湧いて、すっげーかわいい。
「あなた、ドコから来た人なの?」
「え?…ああ……」
――さて、どう答えるかな?
初めてまともに喋れる人に出会ったのに、嘘をついてもしょうがない。
かと云って、本当の事を云ったところで、
夢の向こうから来ましただの、異世界から来ましただの、そもそも、この世界は俺の妄想です、なんて云っても分かって貰える訳がない。
だからと云って、ロクにこっちの事知らんのに嘘ついても、ま~、すぐバレるわな。
――うーん…
迷っていても仕方ない。
ここは、真実を伝えるのみ。
「夢の……夢の向こうから…」
「夢の向こう?」
――あっ…
あかん!
これ、ドン引きされて終わるだけじゃねーか。
駄目だ、これ。
出会って12秒でお別れ、だ。
「うふふ、ロマンチストなのね」
――えっ!?
笑った?
おもしろかったの?
ええっ!?
なにこれ?
すっごく、すっごく、かわいいんですけど~!
あ゛あ゛~、コレ、あかん。
いや、惚れたね。
「うふ。それで、本当はどこからいらっしゃったの?」
――あうっ
どうしよう。
ジョークと受け取ったんだ。
参った。
本当の事を云えば、それはそれでヒカれる事、疑う余地なしだ。
(…ケロッ)
――ん?
(…つけろ!)
――はっ!
こ、これは、俺の中のリトル俺の声。
(
――なんだって?
(恰好つけろ、全力で!)
――カッコつけろ、だって?
おいおい、リトル俺よ。
いつもにも増して、アドバイスが適当になってんじゃねーか。
とは云え、真実を語ったって訳分からんし、こっちの事もよう分からんし。
――えーい、まま、よ!
「――
プレーンやスフィアとは抜本的に異なり、
それは重なり合う多次元、異次元、平行世界、表裏世界――と云うべきか。
一にして無限、無限にして一なる宇宙の深淵、
――
――ハッ!
やってしまった…
よくもベラベラと訳の分からない
そもそも、早口過ぎんだろ。
いつもの、妄想癖が、ポロロッカ状態。
“夢”の中でさえ、コレだ。
目も当てられんな、俺。
「――…」
――あ~あ…
33-4。
引かれちゃったよ。
折角、こんなかわいいコとお知り合いになれるチャンスだったのに。
「…も、もしかして、あなた……
――ん?
なんだ、転生者って。
なにか、さっき話した内容のドコかに、彼女が引っ掛かるような、気になるなにか、があったのか?
うん。
よく分からんが、ここは
毒を食らわば皿まで、よ。
「俺は、来訪者にして観測者、育成者にして創造者――今は、それ以上、云えない…」
おおっ!
ちょっと、カッコイイんじゃない、今の返し。
「…わたしの名は、ファムタファール。ファムタファール・ケレヴリル・アヴリルラニエン。
あなたの名を、是非、教えてください」
――えっ?
エルフ?
エルフって、あのエルフ?
彼女って、エルフなの!?
なんか、すごいぞ。
おいおい、完全にファンタジーじゃねーか。
ブラボー!
おお、ブラボー!
まさに、ファンタスティック!
「俺は、
あっ!
本名、云っちゃった…
しくじった。
焦って、素で答えちゃったよ。
こういうところ、キャラの作り込みが甘いんだよな、俺。
なんか、こう、もっとカッコイイ名前を名乗るべきだった。
「アオバ・カイト…不思議な響き。
太陽の日差しを浴びた大輪の花に
なんて…なんて、素敵な名前なんでしょう!」
あれ?
なんか知らんが、大絶賛じゃねーか。
考えた事もないけど、今だけは感謝しとこうかな。
父さん、母さん、素敵な名前をありがとう。
全然、意味分からないけど、あんた達が付けてくれた名前、高評価、だわ。
おおっと!
うかうかしてる場合じゃない。
これを逃す手はない。
おまけに、
「…ファムぅ……タムファ…タール……てれてれン、ラリルレン?
ん?グリルグリル?…ぶりるぶりる??トルエン…さん、だっけ?」
「呼びづらいですよね。ファム、でいいですよ」
「ぁあ~…それじゃ~、ファムさん。ちょっと頼みたい事があるんだ」
「なんでしょう?」
「すまないが、俺はこちらの世界の言葉を知らない。
もし良かったら、教えてはくれないだろうか?」
「もちろん。よろこんでお教え致しましょう」
ナイスッ、俺!
家庭教師ゲットだぜ。
正直、独学じゃ無理があるんだよ。
ホームステイでもさせてくれる親切な世話焼きでもいれば何とかなるかもしれないが、変人扱いで遠巻きにされるような現状、にっちもさっちもいかなくなってたからな。
「わたしに着いてきてください。屋敷にご案内しますから」
「あっ…は、ひゃいッ!」
おわっ!
声が上ずった。
屋敷?
屋敷って家の事だよな?
え!?
知り合って間もない子に、いきなり、部屋にご招待って。
俺、どんだけ、持ってんだよ。
ラッキー過ぎんだろ、今日。
大丈夫か?
運が良すぎて、不安になるわ。
それにしても、なんで彼女、日本語、喋れたんだ?
不思議。
エルフとかいるようなファンタジーな世界なんだから、そういう事もあるよな?
うん、うん…
――ま、いっか
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