目に見える形を失っても

日々の忙しさに追い立てられるように生きていた女性が、ふらりと迷い込むように入ったお店。そこで美しい絵画を目にした時から、単調な日々は芙蓉の花の色づきのように、鮮やかな彩りを放っていきます。
やがて新しい日々の中で、消えかけていた音楽への情熱が、再び彼女の胸に芽生えます。一人の作り手としての彼女の心に、そして一人の女性としての彼女の心に、共感せずにはいられません。
たとえ思い出の場所を失っても、この出会いの記憶はずっと心に残り続ける。そんな美しい余韻を感じる、夏の物語でした。

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