色づく芙蓉に見守られ、ふたたび飛んだあの日々のこと

夢を抱き、故郷を飛び出し、あこがれていた都市で暮らしていた。
いつの間にか、つばさは羽ばたき方を忘れ、主人公は夢を忘れ、
そして、庭に芙蓉の咲くそのみせに、ふわふわと引き寄せられた。

ひらがなを多用したやわらかな文章が、
静かに、緻密に、そのみせの思い出を語る。
ひりひりとして鮮やかでやさしい思い出を。

無我夢中で「創造」に打ち込んだことはあるだろうか。
おさないほどにまっすぐな夢を追いかけ、走ったことは。
私も「作家」の端くれ。共感した胸が、そっと痛い。

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