キャッチコピーに偽りなし! 重厚で切ない歴史×ミステリ長編

ことの始まりは、乳母の死――豊臣秀勝と江の子・完子が、公家の名門・九条家の忠栄に嫁ぐ前夜に起きた、完子の乳母の突然死でした。
死体の第一発見者であり、完子の義理の兄である少年・豊臣秀頼は、そのとき遺体のそばで、完子の愛猫を目撃しています。
乳母の死の謎が解明されないまま、十年の月日がたち、完子の愛猫も死んだとき。秀頼は「人を斬りたい」という願望を口にするようになります。
完子の夫・忠栄は、秀頼の振る舞いが徳川家との関係に与える影響を憂慮し、「秀頼の乱行は、十年前の怪死事件が関わっている」と睨み、完子と共に謎の解明へ乗り出します。
しかし、一見シンプルな一人の女の死の陰には、眩暈がするほど大勢の思惑が潜んでいて……不穏な気配を色濃く纏う物語は、史実で知られる大阪冬の陣・夏の陣へと、淡々と無慈悲に舵を切り、豊臣家を破滅へと導いていきます。

一つの謎の向こう側に、多くの謎という「情念」が息づいていて、真に迫る描き方に、たびたび圧倒されました。語彙も非常に豊富で、乱世を生きる者たちの心の機微を、丁寧に描かれています。衝撃的な序章の意味を理解したときは、あまりの罪深さに鳥肌が立ちました。キャッチコピーも、これ以上ないほどにぴったりです。

紙の本で読みたいと思うような、非常に読み応えのある物語でした。ヒューマンドラマがお好きな方、重厚な物語に浸りたい方、ぜひお読みください。おすすめです!

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