「好き」を伝えるためのエールがここに。

皆さまは、好きな作家さまにファンレターを送ったことがありますか?
私は、あります。時間を忘れるほど夢中になった物語を書かれた作家さまに、「とても面白かった」「好きです」という気持ちをどうしてもお伝えしたくて、ドキドキしながらペンを握った学生時代を、本エッセイを拝読しながら、懐かしい気持ちで振り返りました。

レターセットを選び、言葉を綴るペンに悩み、相手に伝えたい思いの丈を、文章の形にまとめ上げて、一字一句を丁寧に綴っていく……情報の検索も、他者との意思疎通も、何でもWEBで可能となった現代で、アナログの手法を取らなければならない絶対的な理由は、とても寂しいことですが、ないと言わざるを得ないのかもしれません。誰かに手紙を送るという行為そのものも、近年では減少傾向にあると感じております。

それでも、ファンレターの形で「あなたの作品が好きです」という情熱を伝えたいという心意気や、じっくりと時間をかけて思いを綴った真心は、受け取り手の胸を強く打つのだと、一人の書き手として切に思いました。そんな感動の熱が、新しい物語を生み出すための灯火になるのだと、確かな予感と希望も抱きました。

雲の上の存在のような作家さまに、手書きの言葉を贈るのは恐れ多い。ちょっと敷居が高いかも……そんな気後れをふわりと温かく受け止めて、ファンレターを書くハードルを優しく下げて、尊敬している相手に気持ちを伝える後押しをしてくれる、まるでエールのようなエッセイでした。軽妙な語り口の文章も楽しく、ポジティブなパワーに満ちています。
きっと、皆さまの推し作家さまたちに、好きの気持ちを伝えたくなるはず。ぜひ、ご一読を。