まだ番外編は読んではいないのですが、本編を読了いたしましたのでレビューさせていただきます。
本編通して感じたことは、「硬派なハードボイルド」といった感じです。
とても女性が書いたものには感じられませんでした。
よくバイオニクスの最先端の事や、兵器関係にもよく勉強されていて、『元女性自衛官かな?』なんて勘ぐってしまう自分もいたりしました 笑)
また、通信、電子機器、近未来的な要素を盛り込ませつつ、戦闘形態の最終段階である、『生身の格闘』をも忠実に、渾身を込めた文章で表現をするなど、アクションに関してはかなり力と模索をされたことでないかと思います。
さらに、話が単調にならないように、随所に散らば間かれたアットホームな雰囲気や、ユナの存在などは流石としか言えない部分と感じました。
心理描写や、情景描写なども、知来ちらりと『女性じゃないと書けない文面だな』と感じる部分もありました。キッカの揺らぐ心情やユナの思春期独特のクオンヘの思いのぶつかり合い、情景描写での女性ならではの仕草(メイクアップや衣類関係などなど)は、僕が描くとしたら、女性の友人と質疑応答しながらでなくては書けないでしょう。
その様な文体の資質を持ちつつ、しっかり執筆にあたり事前に各ストーリやキャラクターが、きちっと本筋に纏まる様に作り上げられたプロット、それに必要な勉強すべき資料情報の収集、そしてすずひめさんが得意とする文体での表現、その具現した形が『無神論者たちの唄』という結晶体になったと考えます。
でも、その労苦を読者に感じさせない部分は、それほどまでにすずひめさんがご自分自身楽しんで書かれた結果だと思いますし、それは、この評価の高さとレビューの多さが証明しているのではないのでしょうか。
最後になりますが、今更ですが、完筆お疲れ様でした。番外編に関しては、また一話ずつ大好きなお酒と共に楽しく読ませていただきます。
長文になりましたが、これをもって私のレビューとさせていただきます。
次回作楽しみにしています。
カナタ
SFの出だしとして、世界設定とキャラクター像をしっかり伝える事は重要だと思うのですが、この作品はそれを実現しているだけでなく、冒頭で「これからとてつもない何かが起きようとしている」という期待を持たせてくれます。
シャープでスタイリッシュに戦う、女性エージェントならではの戦闘バリエーションの豊富さ。アクションシーンが終わると会話パートが楽しみになり、それを終えるとまたアクションシーンが楽しみになるような読者を引っ張り続けるメリハリ。次々と襲い掛かって来る敵陣営の、力任せと思われた手口の裏に見える計算された謀略など、枚挙にいとまがない面白味。
紹介文ではなく、台詞や行動で綴られる性格の癖がキャラクターの魅力を最大限に引き出していて、笑顔・涙・怒り・戸惑い・優しさ・哀愁・ジョーク・悪態、登場人物たちが見せる全ての要素に惹かれます。
とにかく読者をあっと驚かせる仕掛けが、最初から最後まで溢れているのも醍醐味のひとつ。
指を一度鳴らすだけでトランプが鳩になる手品を見るような、巧みな伏線と回収に思わず唸ってしまいます!
政府が機能しなくなった日本は某大国の掌の上で踊らされ、
内戦により荒廃を極めることとなった。そんな架空の未来。
「生体義肢」の実験の陰に、せめぎ合う孤独と渇望がある。
年月を経て実験に革新の兆しが見えたとき、死闘が始まる。
前章では自衛隊員のケイイチ、本章ではスパイのキッカが
生体義肢の移植を受けた経緯が初めに語られ、話が導かれる。
生体義肢とは、生体由来の筋肉と骨から成る生身の義肢を
神経細胞レベルで接合し、脳の随意によって動かせるものだ。
天涯孤独のキッカはある日、敬愛する川島博士に懇願され、
Aファイルと銘打たれたデータを届ける秘密の任務を負った。
決死の情報漏洩作戦を後押ししたのは、頼れる先輩のモリノ。
程なくしてキッカは何者かに追跡され、命の危機に晒される。
ハママツで偶然にも出会う人々には血の通った温もりがあった。
キッカは、同じ戦闘用生体義肢の被験者であるソウマと再会し、
拭い切れない違和感と張り巡らされた罠の存在に気付いていく。
危機に次ぐ危機をくぐり抜け、やがて対面する黒幕の正体とは。
強く冷徹で美しく、同時に弱く純粋で儚いキッカが魅力的。
悲しい運命に抗って戦う血濡れのヒロインがお好きな方に
ぜひおすすめしたいハードボイルド・スパイアクション。
細マッチョから癖あり後衛陣まで、男前もそろってます。
アイツが絶対怪しい、と思って読み進んでましたがまさかその人が、
という展開がこれでもかってくらいに繰り返されます。
ネタバレしたくないのでこんな表現で許して下さい。
ごめんなさい、読んだのはまだ半分ちょいです。
ケイイチとハルカがコールドスリープに入ったところから物語が進み始めます。
壮絶な戦闘シーン、次々と襲い掛かってくる敵に精も根も尽き果てそうになる中、
それでもキッカに休憩を許さない作者様の恐ろしさが垣間見えますw
とにかく時間のない中で読むと後悔しますよ。
のめりこんで一気に読みたくなる作品ですから。
※タイトルはSF Hardboiled Love Romanceです。文字数制限のせいで略しただけです。
血の味は好きですか?
私はあまり好きではありません。つまりは口内を切って血液を味わっている状態ですから。愉快な状況ではないでしょう。
この作品からは血の味がします。
なのに、ちっとも嫌じゃない。それこそが魅力を引き立てているから。
物語の冒頭から活躍する実直なケイイチとその彼女が、この物語の主軸にいます。彼らは運命の波に飲み込まれながらも、出会うべくして出会い、惹かれ合い、そして最後の天の川を渡るときに再会を誓います。
そして彼らが再会するように、すべての物語の歯車とキャラクターたちの行動原理が組み立てられていきます。
ハードなアクション、エロス(ここ重要!!)、そして女が女であることの存在証明――まさに血の味が展開され、息を呑んでいるとあっという間に世界に取り込まれてしまいました。
けれど読み進めていくと、その再会のためのロジックが不思議な「ずれ」を見せていきます。
彼と彼女以外のキャラクターたちがまぶしい光を発してきます。
お読みでないかたは、ぜひ、そのまばゆさを感じていただきたい。
既読のかたには、ソウマと&キッカの存在感のことだと、お伝えしたい。
この血の物語は、実は、ソウマとキッカの不純愛物語なのですから。
ソウマとキッカは、日々に迷い、人生を煩悶し、運命から逃げ出そうと、それに流されて生きようと、苦しみ続けます。その姿は、まるで現実の私たちそのものです。純愛ゆえに再会を求めるケイイチとは全然違う。
物語の後半は、ソウマとキッカが、人間の弱みを抱えながら、それでも気持ちに気づき、腫物に触るようにやんわりと距離を縮めていく。
「お前ら中学生かよ! 美味しい! 正義! ソウマのツンデレ! はよデレろ!」と叫ばずにはおれません。
ちなみに私は叫びました。はよ! デレよはよ!
ケイイチとヒロインが純愛だとすれば、ソウマとキッカは不純愛。
この素晴らしい対比が、物語の隠れたアピールポイントになっています。そして現実の私たちは、この対比を目前にしながら、両カップルの行く末を祈ってしまうのです。はよ幸せになれ! と。
血の味は好きですか?
その独特のアクは、美味しいものを引き立てます。
チョコレートにはカカオという苦味があるように。
抹茶パフェには抹茶というエグ味があるように。
バニラアイスにはバニラという強烈な苦味が備わっているように。
この物語の2つの恋愛物語は、血の味でデコレートされるからこそ、きわめて甘美な味わいを提供してくれているのです。
イチオシです。
みなさまもぜひ、その味わいを堪能してはいかがでしょうか。
丁寧で簡素な描写も、その魅力を際立たせています。
じんたね拝
情景描写、特に戦闘シーンが圧巻。
もちろん、世界観や設定もよく練られていて、ストーリーを追うだけでも十分楽しめる作品だ。
だが、この作品を読んだら、アクション・シーンで受け取る情報量の多さと、その量が詰め込まれた各一文の情報密度に驚くだろう。
映像で見たら、これでもかと繰り返される動きの連続にめまぐるしさを感じるのではないか。
そう感じてしまうほどの情報が、アクション・シーンには詰まっている。
SFというジャンルより、アクションというジャンルでカテゴライズしたい作品。
つまり、動的な作品を求める読者にぴったりのエンタメとお勧めできる。
もちろん、バトル系SFを求めている読者にも是非読んでいただきたい作品です。
一話を読んですぐにレベルの高さに気付かされました、まさかこんなところに野生のプロがいるとは……と。情景描写や戦闘描写に無駄がなく、シーン切り替えの潔さはアクション映画を見ているようでした。
それと特筆すべきは男性と女性の感性が至る所に敷き詰められているところです。そこには性別が見せる男性と女性としての立ち位置や、扱われ方、そして考え方の違いが多く表れていて、それに対する理不尽や葛藤を見せつつも、それを面白可笑しく茶化していて決して読者にこれと押し付けることなく上手に料理されていると感じました。
特にこの物語は女性の方に読んで欲しい物語であると同時に、書き手の方も女性の心理描写については、大いに参考すべき教科書的読み物になると思います。文句なしの★3。
俺はこの作品を見て確信したぜ、これはプロの仕業だってな!
何故か?見ればわかるんだが、抜群なまでにアクションシーンがうまい!俺も冷蔵庫でつくられる氷くらいにはアクションや戦闘シーンを書く自信はあったつもりだが、そんな俺の自信をかき氷でも作るかのようにすり潰しちまいやがった!それほどまでに情景が思い浮かぶシーンがたくさん書いてあるのさ!26話にあるキッカとソウマのところとか俺にはまず書けねえ!完敗だ!
また、ストーリーもすげえ!まるで上質なハリウッド映画を見ている気分にさせるくらい、設定、伏線、キャラが綿密に絡んでいる!こんなすげえ作品、プロ以外誰が作れるって言うんだ!?
失礼しました。
ですがこの作品ほんと凄いです。セリフ回しといい、戦い方といい、大作映画のノベライズ版を見ている気分です。またキャラもうまいです。特にソウマです。無理矢理既存のジャンルに分類するなら「ツンデレ」にあたる彼ですが、そこは作者の力量が遺憾なく発揮されているために一味も二味も魅力が出されています。特に第38話。お約束のテンプレキャラではこの展開は出来ないでしょう。ツンデレ好きも、そうでない人も見てほしい展開です。
本作を紹介するにあたり、まず目を見張るのはその戦闘描写である。
疾さと立体感を兼ね備えた戦闘シーンは、脳裏にまざまざとその映像が浮かび上がる。登場人物たちの窮地が、あるいは傷を抉る痛みが、まるで読み手である私の身に起きたのではと錯覚するほどに。
"SFアクション・エンターテインメント"と云う名に恥じぬだけの戦闘描写が、何よりも読み手を惹き付けて離さない。
そして次に、心情描写である。
特に、主人公である特殊工作員キッカの、内面を書き出す表現力は圧巻だ。強さの裏に潜む自己矛盾。女の醜さと、孤独な少女を内包した一人の主人公の姿が、とても魅力的に描かれている。
戦う"今"だけではなく、戦うまでの"今"が描かれている事。
そして、”今まで"もずっと戦ってきたのだという、キッカの輪郭がしっかりと描かれている事。想像の域は出ずとも、それらはきっと作者の豊富な人生経験に裏打ちされているように思う。
"SFアクション・エンターテインメント"と云う枠には収まらぬ人間ドラマを、この作品に見る。