【ネタバレ、長文注意】
この話は、異世界ものだがこれまでのハーレムや超能力などの要素はなく
、愛がテーマである。
最初は基本的に日常パートが続く。主人公であり働きながら子育てもするりえりーとその息子のわたる、厳しくも優しい黒田を含む様々な人が出てくる。 しかし、その中にりえりーには夫がいたことを匂わせる発言など節々に不穏な発言がひっそりと含まれているのが中々憎い演出だ。
その後りえりーが会社からの帰り道に黒い穴に落ち、異世界に着いてから、物語は進み始める。
りえりーの夫との再会、黒田と夫とりえりーの恋など様々な出来事があるが省略する。 二年前に夫がこの穴に落ちていたことからこの穴を生み出したのはわたるであることを推理するシーンなどは、伏線を踏まえていて驚き、興奮した。
また、この本にはよく鳥(鳩であると推測できる)が出る。
鳩が出るときは、ほぼ必ず恋にまつわる出来事が起きるとかである。
鳩を愛の象徴、平和として考え、愛を具現化しようとした作者の考えに脱帽した。
とても面白い小説を読めた。
また、伏線を全て分かった状態でもう一回読むことをお勧めする。
何気ない日常を守る強さ、大切にする優しさを教えられた。見知らぬ異世界なのにすぐ隣にりえりーたちがいて、同じように生きているように思えた。黒い穴は、わたしたちの身の回りにある何か身近なことだろう。それは命を脅かすかもしれない。心を追いつめるかもしれない。そこには、人それぞれの感じ方がある。そんな簡単な事実を思い出させられる。りえりーのわたるへの思いは、きっとその一つだろう。捨て子を抱き込めるのは、彼女が強かったからだ。黒い穴の巻き起こす騒動のなか幼子を拾い、日々の暮らしを続けた彼女を尊敬する。それは、誰にでもできることのようで難しいからだ。彼女のようになりたいとわたしは思う。