一幅の絵を眺めるような自在の趣。浪漫と抒情が彩る優しい世界

まず拝読して「俳句の世界ってこんなに色鮮やかなんだ」と驚きました。

正直に申し上げると、俳句にさほど触れてこなかった私にとって俳句の世界はもっと水墨画のようにモノクロで、侘びだとか寂びだとか、どこか枯れた趣のある世界だと思い込んでいました。今になってみればそれはたった一面を見ていただけに過ぎなかったわけですけれども。

作者様の俳句は、
時には日なたぼっこする猫のように飄逸なところがあったり
時には初夏の入道雲のように躍動感に溢れていたり
時には月夜に鯨の歌が響く幻想的な物語が重なって見えたり
時には枯木に灯る星あかりに世界の不思議や美しさを垣間見たり
一言でいえば『変幻自在』といったところでしょうか。
穏やかでいて、でも常に挑戦しているような。個人的には"枠に囚われ過ぎない自在の境地"といった言葉がしっくりときます。

ともすれば抒情も強すぎると刺激的になってしまうものですが、この作者様の描く世界はまるで一幅の絵を眺めているときのように穏やかで、吟味された一語一語から伝わる繊細な余韻は心に優しく沁みいるようです。

この浪漫と抒情漂う優しい世界を、
現代社会を生き抜く全ての皆さまに、
オススメさせていただきます。

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