不思議の境界線ってどこにあるんでしょう?
目の前に見えているもの、触れられるものは必ずそこに存在するものだと信じていいのでしょうか?
普段何気なく接点をもつ多くの人の中に、この世のものではない人は紛れていないのでしょうか……?
考え出すと止まらなくなる、そんな答えの出ない疑問。
オカルトサークルで幽霊部員と呼ばれる主人公の赤宮さんは、とある事件をきっかけにそんな不思議な思考の世界に足を踏み入れることになります。
彼女の相談相手であるサークルOBの粕谷さんも、なんだか不思議な人。
序盤の彼の描写はいたって普通の振る舞いのように描かれているのに、なぜだか気になる、なんだか謎めいている、主人公だけでなく読み手までそう思わせる行間の雰囲気づくりが秀逸です。
ええっ!?と驚く展開の連続で、読む手が止まらなくなる不思議ストーリー。
彼らの不思議な日常はまだまだ続きそうですので、幽霊作成実験の経過観察は私もぜひしてみたいところです(^^)
誰でも一度は考えますよね。
この世界は、目に映る物は、手に触れた感触は、本当にあるのだろうかと(え、考えないですか?)
本作はホラー物とも怪奇物とも違う、怪しい雰囲気のある物語でした。大人の読み物ですね。
主題がそのままタイトルになっており、読者に投げかけた作者様の心模様(覚悟)でもあります。
最近は何でも起承転結を求める人が増えたので見かけなくなりましたが、文豪と呼ばれる作家先生の作品の中には、こういった構成の作品も多く、久しぶりに興奮しました。
エロチシズムの無い耽美主義文學とでも言いましょうか。
何を美しく描いているのかは、多分一般の方と作者様とでは感覚が違うと思いますが、寄せて行ってそれがなにか分かると、とてもストンと落ちます。
もう手放しで面白い作品です!
とあるミステリー系のサークルに入っている大人しい女の子の話なのですが、彼女にはちょっと特徴があって……
という感じで始まるミステリータッチの幽霊話。
主人公をはじめとして、謎めいたOBの粕谷さん、さらになぞの人物と魅力的なキャラクターが登場。
そして不思議に満ちた物語が幕を開け、静かに謎が紐解かれていきます。
この過程が面白いのはもちろん、惹きつける展開と構成、独特の空気感などとても完成されている作品です。
そしてラストに訪れる読後感のいいエンディング!
あっという間に読めてしまうのがもったいないほどの作品。
ぜひ読んでみてください。
今作のようなトンデモナイ物語と出会えるから、カクヨム界は面白いのです。
オカルト、とタグにありますが、単なるこけおどしの幽霊話ではありません。
ちょっと角度を変えて眺めてみれば、ゾクリと背筋が凍りそうな怖さが内包されています。
女子大生の早苗が、クラブのコンパで出会うOBの粕谷。
ここから想像さえしていない世界へ、瞬間に放り込まれます。
引き込みかたが素晴らしいため、次話が気になり一気に最終話までいってしまいました。
むしろ、この最終話が新たな展開の序章であって欲しいと思います。
タイトルの意味がわかったとき、さらに怖気が走るかもしれません。
夏にもってこいの物語です。
<序論>
本レポートは一般的に幽霊と称されるものが、果たして人為的に作成
されるものであるかどうかを考察したレポートである。
レポート内に書かれている内容は、基本的に実話をベースとして
作成されており、そこに恣意的な類推を挟むものではない。
幽霊と人間との関係は、見える見えないの能力にもよるが、
見えたとしても記憶されるかどうかの部分に占められる比重が大きい
その為、たとえ見えていたとしても本当にそれが幽霊であると、
認識する人間が少ないと考えられるものである。
本レポートにおいては、以上の推論を実証すべく検体の観察を
通じて幽霊の実態について取りまとめたものである。
観察する検体の女性は、数年間実社会との交わりを過不足無く
経験しており、推論にあたっての必要条件を備えたものであることを
確認済みである。
以下、本論に続く。【粕谷十朗】