広いようで狭い、この世界と人々の心

予想を超えたところで偶然が折り重なっていく、大変緻密な作品です。一人、二人のエピソードで終わってしまいそうなところで、別な関係人物が絡まり、世界をじりじりと広げ、あるいは狭めていく。
人間、どこで何があるか分かったもんじゃないですが、それを明るくも暗くもなく、淡々と、しかし感慨深く掘り下げていく。
不思議ではありますが、いや、不思議だからこそ、大変な感銘を受けました。

そしてそれを支える、洗練された文章がまたすごい。『良い』んじゃないんです。『すごい』んです。やはり、ヒューマンドラマ特有の文体ってあるのでしょうか。
作品そのものだけでなく、文体的なアプローチという意味でも、大変すばらしい読書体験をさせていただくことができました(^^)

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