この作品の舞台となっているシチリア島には、世界でも有数の活火山として知られているエトナ火山がある。作中のキーアイテムとして出てくるルビーの指輪には、この火山の神が遣わした使者のようにも見えた。
ルビーの指輪を求めて争う者たちの心の中。欲望まみれかと思いきや、ふとした時に見せる優しさや孤独から解放されたい気持ちも描かれていて、読んでいて不思議と心地良い気分になってくる。特に、ラウロと呼ばれる主人公は、その時代の人間臭さというか、狡賢さと弱さが上手く出ていて、話を追うごとに味方したい気持ちになってしまう。
心地良いタイミングで完結となっているが、エトナの神がルビーの指輪を再び遣わして、新たに人類へ与える試練なんかも期待したくなる作品です☆
中世という舞台設定から、何やらファンタジックな感じを受けて読み始めましたが、そんな優しい感じは一切なく、生きる事に執着する主人公の周囲で起こる悪意の連鎖が凄まじかったです。
人間の本音の部分を書いておられるのだなと感じました。
ラスト近くで主人公の心情が若干変化するのですが、それすら普通に生きていると誰にでも起こりうる変化であり、彼が特別な人間だと示唆する物ではありません。
これからも主人公は自分の思うまま生き続けて行く。
それだけなのだ、人とはそういうものなのだというメッセージが隠されている気がしてなりません。
こういう設定の物語、大好きなので凄く面白かったです!
イタリアにあるシチリア島。時代は現代ではなく古い設定で描かれています。奴隷商人が普通にいる時代です。
主人公であるラウロが墓荒しをするシーンから始まります。物語は進行に緊迫感があり読み耽ってしまう面白さ。裏切りや野蛮な行為が主人公を容赦なく襲います。墓荒しという悪行をしているラウロ。彼もまた生きる為に必死です。
私は読んでいて、いつ主人公が死んでしまうのかハラハラしました。それほど淡々と物語は展開していきます。癖になる面白さです。
そして、なんと言っても主人公の悪運の強さと、天に見捨てられたかのような運の悪さ。それに彼の性格が加わり独特なストーリーが展開されます。
これほどまで、おどろおどろしい世界感を描いているのにラストの清々しさは一読の価値あり。
本作は詩・童話・その他に分類されていますが
確かにミステリーでもあり、歴史・時代・伝記っぽくもあり
最後に恋愛要素まで入って来るので、分類が難しいです。
舞台は中世のイタリア、泥棒稼業に身を置くラウロという男が主人公
このラウロがどう見ても泥棒には向いていない人物。
運がいいのか悪いのか、とにかくラウロの人生は行き当たりばったりです。
大司教の墓から奪った赤いルビーの指輪を巡って、いろんな人生ドラマが展開されますが、
最後には真っ当に洗濯されたラウロに読者は安堵することだと思います。
今の題名が『シチリア島奇譚(仮)』なのですが、
もう(仮)のままで表したほうがラウロの人生そのものじゃないかと
思ったりもしています。
放っておけない愛すべき悪人、ラウロの物語、面白かったです。