いつも見守っていてくれたのは、割烹着がよく似合うお母ちゃん。

幼い頃から嫌いなものが多かった主人公。
世間に息苦しさを感じ、突き放していくことで自分の世界を狭め、殻に閉じこもるようになってしまった。

その殻をノックするわけでもなく、諭すでもなく、甘くて香ばしいクッキーの匂いと一緒に、ミトンをつけた手で手招きするお母ちゃん。
「美味しいでしょ? 秘訣はこのバターなの」
と、理由を教えてくれたけど、美味しい訳はそれだけじゃないことを仄かに感じた。

主人公の嫌いだったものたちを、美味しく楽しく料理していっちゃうお母ちゃん。
辛い悩みを、優しく包み込むような文章で綴られる様子がとても心地良いです。

母の味を受け継いでゆく、当たり前なようで難しいけれど、愛情のレシピはしっかりと伝わるのです。

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