1月15日

 日岡さんは、どうにか安定した状態に落ち着いたそうだ。知らせを聞いて病院にやってきた僕は、しかし、日岡さんに会うことはできなかった。

 彼女たっての願い。『最後に、家族と出かけたい』という要望が許可され、彼女は本来安静にするべき体を車椅子に乗せて、家族とどこかへ出かけているのだそうだ。

 後悔を作らぬように。

 遺された人に想いを残すために。

 いずれも、いつの日か日岡さんが冗談っぽく言っていたことだった。


 僕は、いつものように仕事へ行き、調子を戻した借金取りにノルマギリギリの収入しか得られていないことをなじられながら、1日を終えた。

 こんなことをしている場合ではない。そんなように思えたがしかし、今の日岡さんに僕がしてあげられることはない。


 ……明日にでも病院に行ってあげよう。そう思った。

 日岡さんの大嫌いな、お供えのリンゴを持って。

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