1月15日
日岡さんは、どうにか安定した状態に落ち着いたそうだ。知らせを聞いて病院にやってきた僕は、しかし、日岡さんに会うことはできなかった。
彼女たっての願い。『最後に、家族と出かけたい』という要望が許可され、彼女は本来安静にするべき体を車椅子に乗せて、家族とどこかへ出かけているのだそうだ。
後悔を作らぬように。
遺された人に想いを残すために。
いずれも、いつの日か日岡さんが冗談っぽく言っていたことだった。
僕は、いつものように仕事へ行き、調子を戻した借金取りにノルマギリギリの収入しか得られていないことをなじられながら、1日を終えた。
こんなことをしている場合ではない。そんなように思えたがしかし、今の日岡さんに僕がしてあげられることはない。
……明日にでも病院に行ってあげよう。そう思った。
日岡さんの大嫌いな、お供えのリンゴを持って。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます