不死身

息を殺し、目にも留まらぬ速さで林を駆け抜ける。

足音をたてないよう一瞬でケリをつける。

2人は僕に気づいていない、今だ!!


「グサッ!!」


その手に握った短剣は復讐屋の胸に深く刺さり、バタりと倒れた。

その場が静まり返り僕はホッとした。

やっと殺したのだと、やっと終わったのだと。

だが話はそう上手くいかなかった。


奴は立ったのだ、深い傷を負いながらも。

確かに胸に刺さったはず、感覚もあり明らかに死んだはず。

でもその考えは元々間違っていたことに、僕はまど気づかなかった。


「おいおい、お前もいたのか。埋めたはずがなぜ生きてる?お前も人間じゃないのか??」


復讐屋は意味深な言葉を発した。

「お前も人間じゃないのか?」

この言葉はまるで復讐屋は人間ではないかのような言い方だ。僕は奴に恐怖を感じた、不死身の体を持つ男に。


とっさに体制を立て直す僕を見て、嘲笑うかのような顔をした。

「ここでひとつお前にいいことを教えてやろうか。」

そう言うと奴は自身の体の秘密を話してくれた。

復讐屋は人間ではなくクローンだと言った。

だから胸を刺そうが撃ち抜こうが死なないのだと。

殺す方法など無いのだと。

一旦僕は奴から離れようと走って逃げた。

今の僕では勝てないと悟ったからだ。

死なない生物を殺すなんて不可能で、何をしても奴は僕を追ってくる。

つまり僕は、今は必死で逃げるべきた。

死にたくない、ただその一心で体は動いた。


追うことをやめない復讐屋に背を向けた僕自身を少し情けないと感じた。

僕は逃げたのか?僕は怖がっているのか?

いや、僕は負けないし怖がってなんかない!


「俺はお前を殺しに来たっ!お前が不死身でもなにか手はある!違うか!」

僕はダメもとではあるがその答えにかけた。


復讐屋は答えた。

「なかなか冴えてるじゃないか。いいだろう、一つ教えてやる。死ぬ事は出来ないが思考を停止させることなら出来る。思考を停止させる=死のようなものではないか??だからそれが俺にとっての死であろう。」

その言葉にハッとした。

脳を破壊すればいい、人間は脳が無ければなにも考えることは出来ない。つまり奴の脳になんらかのダメージを与えれば何かが変わるはずだ。


必死で考えたが一つしか策は思い浮かばなかった。


それはあまりにも馬鹿馬鹿しくも正しい選択だったのかもしれない。

僕は復讐屋に向かって走る。

そして短剣を振りかざす。


僕の攻撃を避ける復讐屋。

いつしか僕の真後ろには盗賊の頭がいた。

僕は盗賊に視線を送りコミュニケーションをとった。

盗賊はピストルを握る。

僕は短剣を構える。

二人で同時に復讐屋に向かいそれぞれの技術を振舞った。

見事な剣の連撃を避けた復讐屋に見事に命中した銃弾。

復讐屋はその場に倒れもがく。

僕は即頭に剣先を向け思いっきりフルスイングで剣を降った。


血が飛び散る。


復讐屋は息をしていなかった。

盗賊と僕の間には謎の絆が生まれ、戦いに勝利した時ついついハイタッチをしてしまった。


僕は倒したんだ、やっと。

喜ぶ2人を点が祝福してくれるかのように空が晴れる。


「ザクッ」

「ゔっ....」

僕は倒れた。

必死で目を開け周囲を見る。

僕が死に彼が生きる、これは絶対なのだろうか。


復讐屋は血反吐を吐きながらも立っていた。

頭を真っ二つにされながらも、その笑は消えていなかった。


「俺は、不死身だ。」

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