君の為に僕は今日も。
暴虐のカズ
第1話人は出会い別れるもの
「あぁ、綺麗な月だ...」
無数に広がる星々、無限に広がる夜空。
気づくとそこは海だった。
今何が起きているのか全く理解出来なかった。
息が苦しい。
僕は必死で泳ぎ、岸へあがった。
「誰もいない...」
当たりを見渡したが物陰ひとつ見当たらず、波の音しか聞こえなかった。
「なんで僕はこんなところに...」
「ッ...!!」
脇腹が痛む。見るとそこには銃弾の跡。
驚きと激痛で頭が混乱した。
心拍数が上がる。呼吸が荒ぶる。体が震える。
「うわあああああ!!!!!!」
また僕は気を失った。
目を覚ますと日が照っていた。昼だ。
カモメの鳴き声に誰かの足音。
僕は海岸で横たわっていると誰かが近づいてくるのが分かった。
女の子だ。髪には艶があり、ハキハキとした元気な声。
「君、大丈夫?ずっと倒れていたけど」
頭痛と傷、心の痛みが残ってとても普通に会話出来そうに無かった。
「あなた名前は?どこの人?どうしてこんな所で倒れてたの??」
そう質問攻めされては困る。自分自身でも何が起きたのか分からないのだから。
「私はティルフィーナ!ティルって呼んで!あなたは??」
「ティル...僕はルーク」
すると彼女はすごく嫌な目で僕を見てきた。
きっと脇腹の傷の事だろう。彼女の視線、表情ですぐ分かった。
僕は「心配ないよ」と言わんばかりに今出来る最高の笑顔を返した。
そして安心したのか、腰を落とし、何も言わずにパンをくれた。
「食べる?」
きっと彼女なりの振る舞いなんだろう。
僕は有難くいただいた。
1週間何も食べないくらいの空腹だったのかそこそこの大きさのパンをぺろりと平らげた。
満たされていく腹と癒されていく心の傷。
彼女の笑顔がとても可愛く見えた。
僕は涙が止まらない。
きっと僕は彼女に恋をした。
この出会いがこの先大きな運命の引き金を引くことになろうとは予想もできなかった。
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