おわりに
様々な星を見た。
様々な国を見た。
様々な人に会った。
憧れたくなるような国があった。
あまりこうはなりたくないな、という星があった。
世代を渡り、様々な時代の様々な体を借りながら、私は本当にたくさんの人間の社会を見てきた。
ここに記した様々な記録に私は「ディストピア」という銘を打ったが、果たしてこの全てをディストピアと呼ぶべきかどうかは意見の分かれるところだろう。
こんなものはディストピアと呼ぶべきものではない、と言う人もいるだろうし、全てユートピアであると言う人もいるのかもしれない。
まだテクノロジーが進歩していない時代に描かれた「ディストピア」は、もっと人間にとって残酷で厳しいものが多かったようだ。
人が機械に支配される。
人が奴隷のように扱われる。
そんな未来を想像し、描かれた物語がたくさんあった。
だが、考えてもみてほしい。
結局のところ、人の世界は人の願いが作り上げる。
不幸になりたいと願う人などいないのだから、人間の世界が人にとって不幸なものになることは滅多にない。
いや、一時的に不幸な状況に陥ることはある。実際にたくさんの国でそういう事は起こっていた。
しかし、超長期的な視座に立つならば、人の世界は必ず常によりよい状況に向かう。
実際、この記録には含まれないたくさんの星・国で、多くの人が幸せに暮らしていた。
一時的に絶望的な状況に陥る国や星はあったが、それが永遠に続くことなどは決してなかった。
今回「ディストピア」と銘打って取り上げた星や国にしたって、彼らは決して「不幸」ではない。幸福を追求する過程におけるほんのちいさなボタンの掛け違えで、少し珍しい、極端な状況になっただけだ。
私は何千、何万という社会を見てきたが、古い物語のような絶望に満ちた「ディストピア」は、ついぞ一度も見たことがない。
あったとしてもそれはほんの僅かな時間で立ち消え、すぐに歴史の彼方に消えた。
あなたの未来は、あなたの願いが作るのだ。
あなたの願いがよいものならば、あなたの未来はきっとよいものになる。
人生も、社会も、国も、星も。
だから徒に絶望に飲まれる必要はない。
まあ、私のような情報収集と解析のための人工知能に、そんな事を言われても困るのかもしれないが。
いずれまた、違った切り口で様々な星や国のレポートをしようと思う。
もし何かリクエストがあえば、教えてほしい。
それではまたいずれ、どこかで。
世界ディストピア紀行 中谷干 @nakayakan
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