芽吹くつぼみのさやけさ

 一行目を目にした途端、これは好きだ、と直感しました。
 ほんとうに力のある、そして好みにあうお話を見つけたときは、だいたいこのような天啓に打たれている気がします。
 その直感に違わず、心を揺さぶられるお話でした。最初は文章そのもののうつくしさもあり、じっくり拝見するつもりだったのですが、いつの間にやらその「つもり」も忘れて一気読み。涙が出そうになりました。
 少し先の現代と、百年前にそれぞれ生きる(た)女性たち。どこか似た性質を持つ彼女たちの生が不思議な縁で交わり、共鳴し、そして次の時代へつづいてゆく(たとえば図書館そのものの存続であったり、果音ちゃんの未来であったり)。
 その脈々としたひとの営み、はかなくも強いそのうつくしさに胸が震え、からだの奥底から、なにかが溢れてくるようなたまらない気持ちになりました。
 ここに描かれた女性たちは、小さくかよわく、それでいてしなやかに激しい。そのさまがこれから芽吹きゆく晩冬のつぼみに見え、そっと手の内に包み込みたくなりました。
 まばゆく清らかに、なんといういとおしい物語。拝見させて頂き、ありがとうございました。

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