美しくも哀しい、そして優しい物語

魅力的な道具立て。
ノスタルジックな大正時代。旧家の邸宅を改装した図書館。

導入も秀逸。
きっかけは誰もいない夜の図書館。
閲覧用の大きなテーブルの天板の裏一面に書かれた文字。一体誰が書いたものなのか。
それを見つけるのは子供の視点。大人では決して気付かない痕跡。

導き手となるのは、図書館に勤める女性。他者と距離を置き、読書という行為を通して書物と思考の領域へと潜行することに耽溺する。

そして、百年前の少女が自らを封印するかのように潜ませた、図書館に息づく美しき仕掛け、その真実に一歩一歩近づいていく。

物語の中を游ぐ金魚は、小さく儚く、そうでありながら鮮やかに記憶に焼き付く。

美しくも哀しい、そして優しい物語に、静かに心打たれました。

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金魚邸の娘