心当たりが…(汗)

「ふむ、ふむ」と首肯し、
「ドキリ」としながら更新分を読了した。

私、すなわちレビュー者は先日「カクヨム」に
「歴史・時代・伝奇」ジャンルの短編で
デビューしたばかりの新参者だが、
そもそも当該ジャンルが過疎地であることを
ろくに知りもしなかった暢気者である。
(カクヨムコンテストに応募できないだと…!?)
〔追記:応募条件から外れていたのは、
一部のコンテストなのですね、謝して訂正します〕

本作は「ジャンルの壁と地形効果」「一次試験」
「名文」=必ずしも「高評価」ではない?、等々
名作が「埋もれてしまう」理由を
わかりやすいキーワードを用いながら
作者が解き明かしていく。

私は既に
「書きたいものをそれに適合した文体で書き、
多数でなくとも世間のどなかに見ていただければ十分」
というスタンスを決めていたが、
それでも本作を読み、改めて
「名作って何だろう?」
「読者に読んでもらうとは?」と
我が身と自作を振り返るきっかけを得た。

特に「名文」の下りにおいては、
全く他人事とは思えず、
「これって大いに心当たりが…(汗)」と
おののききながら読ませていただいた。

というのも、私自身が歴史小説で――
特に中国史や東洋史を題材にした作品で
中島敦のごとき美文調には及びもつかぬとはいえ、
用いる文体が「硬い」文章であることは
人にも言われ、よく自覚もしているところである。

とはいえ悲しいかな、多少なりとも長く
漢文教育を受けてきた身としては、
何もわざと気取った文章を書いている訳ではなく、
漢字文化圏の「むかしばなし」を書くとなると
パチモンとはいえそれらしく漢文調になっていないと
生理的に落ち着かないからである。
しかし自分に酔っているような、
読者にとって読みにくい、
ただの満艦飾の文章となっていやしまいか、
と悩んでいるのもまた事実で、そんなところに
本作が目にとまった次第である。

文章、内容ともに読者に必ずしも優しくない、
しかも外国史の歴史小説で
「ネットに投稿しても需要ゼロでは…?」
と心配したカクヨム第一作が予想よりもPV数がつき
嬉しくも丁寧なレビューをも頂戴したので
私自身は良かったと思っているが
これが爆発的により多くの読者に読まれ、
星とレビューを大量に得るかというと
そうではないだろう。

ここまで長くなったが、
本作は「埋もれた名作」を通じ、
読者と書き手のあり方から
読まれる、読ませるということ、
流行と書き手のスタンスとの関係にまで及ぶ。
「カクヨム」で修行しつつ商業デビューを目指す方々、
また歴史・時代・伝奇ジャンルで活動されている
諸兄諸姉にも是非読んでいただきたい好論である。




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