各題に見え隠れする動物たちの野生解放。

恋愛が草食系・肉食系などと揶揄されるようになったのは記憶に新しい所です。
狩るものと狩られるもの。加害者と被害者。
考えてみると、恋愛をハンティングに例えるのは昔からあり、食うか食われるかに例えるのも昔から。

「獅子は兎を狩るのにも全力を尽くす」と言いますが、それもまた違う意味にも捉えることが出来そうです。
普段は眠りこけている獅子が、ひとたび牙を剥いたら……?


>「保健の授業で性教育イマイチよくわかんなかったんだよな。ちゃんと実技指導してくんない?年上だし経験豊富なんだろう」


肉食獣のような男子高校生と、その相手をしなければいけなくなった女子大生。
決して仲良くなれない「拒絶」を突き付けて終わったはず……なのに。
年月が過ぎて社会人となり、同じ職場で再会を果たす二人が絶妙かつ滑稽でした。
絶対無理・生理的に受け付けない、とは女性の常套句ですが(笑)、そんな感情を引き裂いて急速に惹かれ合う恋愛模様が愉快なんです。


ざっくり分けると、お話は二部構成になっています。
主人公の大学生時代のお話。
就職して婚活に励むお話。

婚活でセレブリティな医者と知り合って、そっちと交際する方がどう考えても「勝ち組」なのに、今いち踏み切れない主人公がいじましいですね。
金や地位(医者)ではなく、身近な存在(同僚の肉食獣)に魅かれて行く葛藤。
女性ならではの感情の奔流が、これでもかと列挙されています。

……よく見たら作者様、書籍化経験作家でした。
道理で描写がうまいわけです。そんなん脱帽するに決まっているじゃないですか。

悲喜こもごも、清濁併せ呑むオトナたちの化かし合い。
さまざまな思惑の「動物」たちが本能をさらけ出す瞬間、見てみたいと思いませんか?

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