口達者な「彼」と「彼女」は、いつだって戸棚の中で

持ち主同士の結婚によって出会った、2つの茶碗。
いや、「2つの」と言ってしまっては失礼だろうか。

茶碗たちは、人には聞こえない声で会話を交わし、
昭和一桁から戦時中の東京の様子を目撃する。

ハイカラな旦那さんと奥さんの趣味や嗜好が垣間見え、
次第に日本を塗り込めていく軍事主義に胸が痛くなる。

さらりと読めて、じわりと熱く、心に残る作品。
茶碗たちが見た焦土の上に、今は何があるんだろう。

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