チンチロリンとガーシャガシャ

作者 結城かおる

35

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★★★ Excellent!!!

結婚によって結ばれた男女がそれぞれ持ってきた茶碗。
その茶碗が持ち主の生活を通して見たこと感じたことを、茶碗同士の会話としてサラリと語ってくれます。
私は歴史モノが苦手で、いや、苦手というよりむしろ大嫌いで、蕁麻疹が出るほど逃げたしたくなるのですが、続きが気になって読まずにはいられない凄まじい引力がありました。
義務教育で日本の歴史は知っているし、その後どういう事が起こるのか全部わかってはいるんだけど、それを何も知らない茶碗の目線で語られることが新鮮でもあり、また哀しくもあり……。一途に持ち主やその家族を心配する茶碗がいじらしい。
疎開先を見ては「わー、やめて!」と叫び、最後のシーンでは「お願い、見つけて!」と手を合わせ、もう入り込み過ぎてしまってリアル世界に戻ってくるのに時間がかかりました。

「人間は叩かれても、違う音を出すことがある。ううん、違う音を出さなければいけないこともあるんだ」
という茶碗の台詞が刺さりました。

★★★ Excellent!!!

夫婦になる二人が持ち寄った二つのお茶碗。
息を吹き込まれたように、二人(二つ)の
交わす会話から、この時代の情勢が伝わってくる。

平和な時も、危険な時も、いつも見守っていたんだね。
外に行けるのは、帯止めちゃんだけなのに
二人は人間に沿うようにあの時代を語り合う。

こういう作品を描ける作者さん、ほんと凄いなぁ。
会話だけで、まざまざとしあわせな時代から悲しい時代への
移り変わりが見事に表現されているんだもの。

けなげに主人を心配する二人の行方はいかに。

★★★ Excellent!!!

持ち主同士の結婚によって出会った、2つの茶碗。
いや、「2つの」と言ってしまっては失礼だろうか。

茶碗たちは、人には聞こえない声で会話を交わし、
昭和一桁から戦時中の東京の様子を目撃する。

ハイカラな旦那さんと奥さんの趣味や嗜好が垣間見え、
次第に日本を塗り込めていく軍事主義に胸が痛くなる。

さらりと読めて、じわりと熱く、心に残る作品。
茶碗たちが見た焦土の上に、今は何があるんだろう。

★★★ Excellent!!!

 戦前から終戦までの時代を生きた家庭の様子を茶碗視線で語る面白い作品でした。
 当時の社会への知識が作品内の至るところにちりばめられ、作品世界のリアリティに惹かれます。
 「チンチロリンとガーシャガシャ」という音をタイトルにした点も感心しました。作品内で感じる空気が「チンチロリン」、家族を取り巻く環境が「ガーシャガシャ」、そんな風に感じられ、時代に翻弄された家族のもの悲しさを表しているように思います。

 最後の茶碗は壊れる様子が、一つの時代の終焉と繋がってるようで、ここも悲しいけれど素敵でした。