後記および小説設定
〔後記〕
本作は、集英社webコバルト企画「編集Fの擬人化小説賞」の応募作です。
「擬人化」というお題は想像以上に難しかったうえ、
ただでさえ一筋縄ではいかない「歴史もの」にしてしまい、
うーん、うーん、と唸りながら書いては消し、書いては消し…。
結果は選外となりましたが、
お題を設定されて書くというのもまた
勉強になりますね。
さて、物語の背景について。
私の母方の祖父母はどちらも地方の出身で、
昭和の初期に上京して知り合い、結婚しました。
残念ながら、祖父は私の生まれる前に没しましたが、
祖母は晩年、「昔の東京」や「モダン」「戦争」について
よく私に語ってくれたものでした。
親族以外にも、昭和ヒトケタ世代の人達が
話してくれた戦前戦中に関するエピソードと
そして私が好きな昔の映画ネタや文化ネタなどを
あちこちにちりばめながら、
やっと本作が書きあがりました。
この作品を、
早くに夫を亡くしながらも逞しく生き抜き、
四人の子どもを育て上げた、亡き祖母に捧げます――。
〔設定〕
賞への応募の際に課せられた設定説明を、ここに載せておきます。
〇擬人化されたもの=茶碗二つ
(夫婦茶碗にあらず。人間の新郎新婦が各自持参したもの)
〇年代…昭和八年頃から同二〇年八月にかけて
(1)擬人化キャラ
〇「旦那さま」の茶碗…生産地・来歴ともに不明。夜店で籠に入って売られていたのが茶碗自身の最初の記憶。人間の世界を見てあれこれ寸評するのが好きで、ちゃぶ台の上でニュウスに耳を傾けるのが日課。
〇:「奥さま」の茶碗…生産地は有田、来歴不明。旦那さまの茶碗とは仲良しで、夫婦のような会話を交わす。奥さまの影響で、夏目漱石や婦人運動に関心がある。意外と硬派な話題も得意。
〇:奥さまの帯留め…奥さまが大事にしている、真珠が三つ並んだ帯留め。茶碗の会話に登場するのみ。生産地・来歴ともに不明。茶碗と違い、奥さまと一緒に外の世界に出ることが可能。
(2)人間のキャラ(茶碗同士の会話にのみ登場)
〇旦那さま…商社に勤務。居住地は上野近辺。大学卒。森鴎外とハイネの詩が好きな、もと文学青年。奥さまともども、モボ・モガ世代。出征して戦死。
〇奥さま…女学校卒。夏目漱石が好きな、もと文学少女。
〇お嬢さんと坊ちゃん…子どもたち。戦争が激しくなり、広島に疎開。
〇お清さん…この家のお手伝い。物の取り扱いは丁寧。
チンチロリンとガーシャガシャ 結城かおる @blueonion
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