片道切符と片想い

世界が地球外生命体の発見に沸く中、主人公は少年の日の出来事を思い出す。
かつて同じ学び舎で時を過ごし、けれど声をかけることができなかった少女。
惑星探査機の乗組員として40光年の彼方に飛び立った人工知性体の同級生。
40年の時を越えようやく地球へ辿り着いた彼女のメッセージを見て、彼は何を思うのか。



序盤は地球外生命体の発見やそれにまつわるもろもろが描かれる。
丁寧に世界の描写を敷き詰め、未来が意外と今と変わらない事を伝えてくれる。

けれど、大きく違う事が一つ。

それは人工知能(人工知性体)の在り方。
ある程度の知性を獲得した存在は、たとえ人工物だろうと人と同じように扱われる。
人と同じような権利と義務を有するし、学校にだって通う。

そして主人公は、学校で彼女と出会ったのだった。

学生時代が描かれる中盤はひどくもどかしい。
閉塞感、やり場のない怒り、うまく形にできない愛情。
読者の心をかりかりとひっかき、時に強く締め付ける。

……あの時、ああすれば。

そんな僅かな悔恨すら霞む80年後、主人公はようやく彼女からのメッセージを受け取るのだ。
片道40年の船旅。メッセージが地球へ届くのに、さらに40年。

彼女が伝えたこと、彼が決意したこと。
それらが何なのか、ぜひとも自分の目で確かめてほしい。

どこか新海誠の雰囲気を纏う、ジュブナイルSFとしても恋愛作品としても楽しめる傑作だ。

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