精神科というと、一般的にはまだ敷居が高いと感じる方も多いかと思います。
その理由には、プライベートな問題が多分に含まれていることや、実態がよくわからないことからくる偏見があるからではないかと思います。
私もこちらの作品を読むまでは、その一人でした。しかし、読み終えた時にはイメージがガラリと変わっていました。
本作の構成は、各症状ごとの短編形式になっています。注目すべきポイントは、詳細な現場のリアリティです。決して難しい専門用語のオンパレードではなく、むしろ現場の息づかいが聞こえるような近さで患者さまたちを描かれており、そのため、決して他人事ではすまされないといった感情の揺さぶりをかけられます。
しかし、そんな生々しい現場の世界で、一貫して人の温もりを感じることができます。あえて内容は伏せますが、人に寄り添うことの大切さを教えてくれた彼らの活躍を、ぜひみなさまも感じていただけたらと思います。
ラストの結果には、おそらく涙する方が多いと思います。なかなかお目にかかることはない世界を、感動の物語に仕上げられた良作です。
ぜひたくさんの方に読んでいただきたい作品です。とてもオススメですよ!
治療するのではない。
導くのでもない。
人に寄り添い、人の可能性を信じ、守り、広げていく。
それが、精神保健福祉士。
正直読む前は、資格としては知ってはいたものの、その職務内容は?でした。
実は、最高にかっこいいお仕事でした。
それが読了後の素直な感想です。
精神医療の世界は、とてもヘビーです。
なんといっても、患者の人生が詰まっています。
その中で決して感情的にならなず、静かに心の炎を燃やし、患者と、あるいは患者を取り巻く人々と向き合う精神保健福祉士の姿は、とてもエモーショナルです。
視点を固定せずに、主人公を変えていく手法も嵌っていて、広い視点で精神医療の現場を知ることができるようになっています。
また、専門知識、用語の解説も丁寧かつ噛み砕かれていて、素人でも難なく物語に入り込むことができます。
これらの描写を、物語の臨場感に繋げる作者様の力、お見事です。
ぜひぜひ、多くの人に読んでほしい名作!!
本編読了しましたので、レビューさせていただきます。
お話に隠された命題を......。
ヒトのためのヒトの心からのヒトへの精神保健福祉士からの愛のメッセージでした.°(ಗдಗ。)°.
一生懸命生きている。
一生懸命生きているヒトを一生懸命支えているヒトたちがいた
一生懸命支えられて一生懸命生きようとするヒトたちがいる。
最後患者だったヒトたちの笑顔が見えるようでした。
この世界にそんな働くヒトたちがいるのならきっと明日も頑張れる。
オムニバスのケースワーカーの短編連作でしたが、様々な人生が見えました。
あの時辛かったなんて言葉も出ないほど【彼ら】は一生懸命生きています。
みなさんに心からの祝福を。
皆様も彼らに最大級の祝福を感じてあげてくださいね。
明日もきっと頑張れる物語。
いかがでしょう?
素晴らしい物語でございました。作者さまに心からの感謝を置いて、レビューとします。
精神疾患というテーマは繊細で一筋縄ではいかず
とても難しいと思います。
自分にないモノがその人にあるとき、
ヒトはその人に対し恐れと偏見を抱き誤解します。
この作品はその恐れや偏見と闘い、受け入れ、そして包み込む。
精神保健福祉士と医療従事者の視点で描いた作品です。
決して、他人ごとではない。
いつか同じ境遇に巡り会った時に
精神疾患とは何か?そして自分はどう向き合ったらいいのか?
家族として、当事者として、いろんな立場で考えさせられました。
ぜひこの作品を通じて、精神疾患に対する誤解や偏見が緩和し
優しい地域社会になるように。
おススメしたい作品です。
精神保健福祉士……。
その職業の名前を、いままで知りませんでした。
医師とは違う。
カウンセラーとも違う。
でも、患者さんの心を支え、生活を支え、家族を支える……精神医療の要ともいうべき大切な仕事であり、様々な事情と病状を抱える方と真摯に向き合わなければならない大変な仕事だと、この作品を読んでいて実感しました。
そして、この作品は「統合失調症」「躁うつ病」「うつ病」などの精神疾患についての知識を深めるためにも、とても意義ある作品だと思います。
このカクヨムにも、患者の目線からそれらの病態を扱ったエッセイや作品は多数存在します。
しかし、ここまで客観的かつ長期的な視線で書かれた作品はなかったのではないでしょうか。
ご自身や家族にこれらの病と闘う方がいる方はもちろんのこと、そうでない方にも是非読んでほしい作品です。
自分が、身近な人が、職場の人が、いつ何時、これらの病態を抱える事態になってしまうとも限らないのですから。
そういうとき。事前知識があるのとないのとでは、とれる行動がまったく違ってきます。
あの時、もっとこのことを知っていれば。あの時、もっとよりよく接せられたのに……そう後悔したくないですもんね。
世間には、時代と共に職業は細分化され、生活圏に触れないと知らないままで過ごしてしまう職種で溢れています。
『ときには傘に。あるときは靴に。』で出会った精神保険福祉士と言うお仕事。今の世の中、いつお世話になるか分からない方々が就いていらっしゃいます。
精神疾患を抱える患者と家族と医者と、送り出すべきそれぞれの場所を見据え、橋渡しをするお仕事には、勢いに流されず的確に状況を冷静に判断し、毅然とした俯瞰的視線を維持する態度。
「なんでも相談して下さい」
作中にもある言葉から始まる、丁寧に制度や事務手続きへ導き、説明して下さいます。
雨に濡れて、どうして良いのか分からない人には傘を。
怪我をする事が分からずに裸足で歩く人には靴の使い方と、紹介をしてくれる方々のお仕事です。
世間は、情報の流れも格段に早くなり、得る物も多くなったと言うのに、
多数派と違う部分を責めて、隔離をする傾向になりがちです。
精神疾患が、気合いが足りない。考え方が間違っている。甘えだと、自分とは違う相手に押し付けようとします。
人の生き方、捉え方は違って当然なのだと、適切な情報が円滑に正しく報道され、この作品を通して考え直して下さる方が一人でも多く増えるよう願うばかりです。
精神保健福祉士――。
恥ずかしながら初めて聞く資格であり、当然のことながらその仕事内容もわかりませんでした。だからこそ興味を持って読み進めたのですが……。
第一章は「統合失調症」という病気を発症している、カケルという名の男性を中心として物語は進むのですが、過剰な演出を敢えて排したかのような妥協なきリアルに、作者様の本気度が伺えます。
そして、このリアルというのがとても恐ろしく思えてしまうのが、本作の特徴でもあります。「統合失調症は絶対に完治しない」や、患者の家族の苦悩、そして「精神保健福祉士という仕事の壮絶さ」などなど――。
小説を書く上での、入念な事前準備を思わせる描写の数々にも舌を巻きますね。そして用語説明などもしっかりとされていて、置いてけぼりにされることもない。
とてもよくできたお仕事小説だと思います。
皆さまも是非、ご一読を(⌒∇⌒)
今まで生きてきて、こんな職業がある事すら知りませんでした。
『精神保健福祉士』
精神科のカウンセラーなら映画やドラマで知っていましたが、それとはまた違う本当に変わったお仕事。
調べると全国で7万人程の登録があるらしいのですが、7万人もいるのに知らなかったのは、普通(どの程度が普通なのかという疑問は置いておいて)ではまず関わる事がない職業だからでしょう。
精神を治癒していくのではなく、そのままの状態で出来ることを補佐すると最初に説明されていましたが、本当にそんなことが出来るのかと、先ずそこで興味を惹かれます。
そしてフィクションですが、限りなくノンフィクションに近い患者との関わりが若干の感情を混じえながら綴られて行きます。
しかしそれではただの手記でしかありません。
この物語が読んでいて面白いと感じるのは、そこに一貫した信念を盛り込み、それを軸としてドラマ仕立てに構成しているからだと思います。
このレビューを書いている現在、物語は折り返し地点にありますが、元々予想外の職種についての話であり、誘導の巧みさも相まって全くどういった結末が待っているのかが解りません。(もしかすると、この物語には結末など無いのかも知れません)
読めば『こんなお仕事があったのか!』と、きっと物語に惹きつけられること請け合いです。
実際に存在するであろうリアルなケースを物語の軸として、精神保健福祉士という聞き慣れない仕事がいかに重要なものか、その仕事によって患者さんがいかに救われていくのかを示した、とても読み応えのある物語です。
登場する患者さんの症例がとにかく衝撃的で、このような患者さんがこの先、本当にまともな生活を送っていけるのか、とさえ思ってしまうほど。
そしてその治療の現場では、ただの綺麗事だけではないリアルなお金の問題、社会復帰、家族にいたっては近所からの白い目など、さまざまな問題が飛び交います。
そんな中、精神保健福祉士はどのように患者さんや家族をサポートしていくのか。
もしも自分の家族が精神病に侵されてしまったらどうしたらいいのかを考えさせられるとともに、そうなったときの指南書としても、とても価値のある作品だと思いました。