人の世も、散りゆく花の、儚さよ。

花はよく、女性に例えられます。可憐で美しい、華やかな姿は確かに女性っぽい。

でも、生物学で考えると、着飾るのは圧倒的に雄の方なんですよね。アピールして雌を惹きつける。惹きつけないと子孫が残せない。で、子孫を残す行為をやるだけやって何をしているかと言うと、他の雌を探しに行くことが多いです。生物界の雄は基本やり逃げなんですね。

ところが、人間は違います。
人間は「無力で生まれてきた赤子を、男女協力して育てる」道を選んだ。この過程においては女性が着飾ります。「いつまでも魅力的でいることで男性を惹きつけ、育児に協力させたいから」。やり逃げは許しません。女性が花に例えられやすいのには、そんな生物学的背景もきっとある。

しかしですね、本作はかなり原始的なポイントにさかのぼります。つまり、「男性を花に例える」。
儚い物語です。桜が散るところを見ているような切なさがある。しかしその切なさは、女性が纏うとそれも一種の「美しさ」になりますが……おっと、この辺にしておきましょうかね。

生物的にも、人の世的にも、散りゆく花は美しい。でも散った後の花は……。
そんな話。ある花が咲き誇ってから散るまでの話。
読んでみてはいかがでしょう。

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