怪物に愛された。

 兄の結婚相手には連れ子がいた。「なあ」と呼ぶことになる彼は、人を虜にする魅力を備えていた。小動物を可愛がるように接し、愛しく思う「まお」。大好きだからずっと一緒にいようという、幼い頃の子供じみた約束。その約束は互いが成長し、将来を考える折に牙を剥く。

 凄まじい小説です。なあとまおの関係をこじらせ、取り返しのつかないところまでもっていったものは「好き」という感情であり、その意味の違いだけで「誰が悪い」と断ずることはできません。なあが独善的な「好き」を押し付けることも彼のバックボーンを考えれば……という部分もあるし、だからこそなあを突き放せないまおの気持ちも理解できます。そういったしがらみにままならないものを感じながらも、二人がそれぞれに選びとろうとしたものを尊重したい。ただ、そう信じるばかりです。

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