隣の人のこと、どれだけ知っているんだろうか?学校・会社・友人…。タイムカードを付いてから、もう一度付くまでの付き合い。ふと居なくなると…その人のことを何も知らない自分に気付く。そう、僕もそうなんだと思い知らされる。彼も、僕のことなんて何も知らないのだと。接点を持たないものへ気持ちを届ける。そんな奇跡の日をクリスマスと呼び、それができた人をサンタと言うのかもしれない。なぜなら…そんな特別な日は1年に1回有るか無いかなのだから。
「サンタさん~」の煽り文を読んでやってきたのですがそんなほんわかした話じゃなかった。面白くて思わず読み入ってしまいました。向井さんは果たして幸せだったのかなあ、とふと考えてしまいます。子供は届いたプレゼントを無邪気に喜ぶのかもしれません、と思うとなおさら切ない。大きくなって知ることになるでしょう。父からのほんの細やかな愛情を。
現代の職場環境を象徴するような描写。人と向き合う時間より、パソコン画面と向き合う時間の方が長い。目の前にいるのに、メール上のやりとり。でも、そんな社会の中にいても、家族への愛情は消えなくて。それは冷たく硬質な世界を仄かに照らす明かりのよう。作品タイトルの意味をラストで知り、押し寄せる切なさ。無機質な世界だからこそ、愛情がより浮き彫りになっているのが印象的でした。いい意味で、心に爪痕を残す作品でした。ありがとうございました。
フィクションですが、確かな描写力がこういうことがどこかで起きているかもしれない、と感じさせてくれます。このような末路を迎えた登場人物は、一体何を思っていたのか?それが読者に知らされることはありません。つまり、そこは読者が好きに想像できるということです。語らないことによって余韻が残る、良い効果を生んでいる作品です。
いったい、誰のための人生なのか? そんなことを問いたくなるような作品でした。 忙しい中で、滝に打たれるような日々の中で、誰に何を残していくのでしょうか? そして、これは、誰にでも起こり得るのです。 悔しいくらいに、良くできている作品です!
淡々と描き進められているけれど、要所、要所で光るkey-word。最後には読者をも道連れにする冷淡な結末——。 身近に起こりがちなことを淡々と描き進め、引き込んでいく作者の筆力は地味ながら実力ありと認めざるを得ない。
ありふれた悪循環を生々しくえぐり出すような短編でした。少しくどめの描写が、感情を制御出来ない主人公の心が見えるようです。
あまりにもリアルで、こんな状況に陥っている人が身近にいるような気がしました。職場でいろいろとメールを送っていたのは誰かと繋がっていたかったからでしょうか?それ思うと最後の届かなかったメールがとても切ないです。
遣る瀬無い。何もかもを抱え込んでいた彼に、僕は激しく共感すると同時に彼に怒りを覚える。同族嫌悪だろうか。(抱え込むといういみで)有り触れた話ではあるのだけれど、それにここまで読み手を引き込むところが凄い。サンタという幻想を出し、それを使いある部分では現実の恐怖を落とし込みつつ、切なさ、怒り、悲しみで読み手を揺さぶる。うまい…そして、遣る瀬無い。