エピローグ

 10日前と同じ、いつもの時間帯。

 日課のように私は通信機の前に座る。

 回線を開いてチャンネルを合わせる。

 コール。初めて私と出会う貴方はどんな反応をするのかしら?

 多分…笑っちゃうくらいかつての私と同じなんだろうな。

 スピーカーのノイズが大きくなる。

 もうすぐ会える。

 私にとって最後。

 貴方にとっては最初の出会い。

 胸の中の感情が大きくなる。

 爆発しそうなくらい。

 コール。

 コール。

 愛しい人の名を今すぐ叫びたくなる。

「…メイディ! メイディ! こちらクラスタ星系アブルタス艦隊、駆逐艦ファナール! 原因不明の衝突で機関が暴走!停止できない! 現在無限に加速中! ちくしょう! 誰か応答しろ!」

 慌てふためく様が目に浮かぶ。

 私と話してた時はあんなにクールを気取ってたのに。

 でも、お互い様だよね。

 私だって新しい貴方には上から目線を気取ってたもの。

 あの時、何も知らない私をからかいたくなる気持ちは良く解る。

 多分、今の私の顔は泣きながら笑ってるんだろう。

 愛しい

 寂しい

 嬉しい

 悲しい

 色んな想いが走馬灯のように駆け巡って爆発しそうになる。

 すぅと私は深く深呼吸した。

 大丈夫よ、マリア。

 私なら出来るわ。

 コールも見ててくれるよね?

 今頃、生きろと叫んでいる向こうの貴方も。

 約束だもんね。

 これからも生きる。

 いつか再び出会う為に。

 偶然か運命かなんて知らない。 神様だって解らないと思う。

 でも生きていれば

 生きてさえいれば

 いずれ答は解るだろう。

 さぁ、いくわよ。

 マリア、涙を拭いて。

 彼の、そして私の、新しい出会いを祝福するの。

 しゃんと胸を張って。

 堂々と呼びかけましょう。

 愛しい人の名を。

「…コール。コール・サイン。聞こえる?」

「誰だ? 何故君は僕の名前を知ってる?」


 初めまして

 そしてさようなら

 いつかまた会いましょう


「私はマリア。マリア・アンダーソン。貴方は私を知らないだろうけど、私は貴方をよく知ってるわ」




 ~FIN~

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果てしなき流れの果てに @nakazee

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