第10話 ゲート
そして、深夜になった。
ユウキは、洗濯済である自分の男物の服に着替えた状態で、エルフの森の中に現れたゲートの前に立っている。
「それじゃ、先に帰るから……」
見送りにはクリスと、護衛の近衛兵と、キャスバルが来ていた。
クリスの母親は寝込んでしまい、父親が看病している。
「うん、ボクも準備が出来たら後から行くよ」
クリスは微笑んでユウキに答えた。
「ユウキ、これを持って行ってくれ」
ユウキはキャスバルに白い鞘に収められた剣を渡される。
クラウディアだった。
「いいんですか? 封印されていたみたいですが……?」
あの時は必死だったから勝手に持ち出してしまったが、今から思うと封印を解いて何か問題でも起きたら大変だ。
「かまわん。……というか、お喋りだから封印して、こちらの国で引き取って貰っていた我が国の名ばかりの宝剣だ。ある事ない事を未来の嫁に吹き込まれては堪らん。君の自宅で預かって厳重に管理してくれ……。何かの役に立つかも知れんしな」
そう言うと、キャスバルは微笑んだ。
『なーによう! 私、知っているんだからね? あんたってば……もごもご……』
キャスバルは慌てて剣の柄を魔力を込めた手で握った。
クラウディアが大人しくなったのを確認して手を離すと、キャスバルは苦笑いする。
「それでは、またな?」
「ええ、また御会いできるといいですね」
ユウキはキャスバルに別れの挨拶で握手を交わしながら答えると、クリスにも手を振りながら、ゆっくりとゲートの中へ入って行った。
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