打ち切られた作家の視点で語られるシビアな作家の世界

カクヨムで小説を書いている人の中には、「自分の作品がランキング上位に挙がってゆくゆくは出版社からのデビューを……」ということを考えている方も多いでしょう。
しかし、外側からは華々しく見えるプロの世界というのはいったいどういうものなのか。
そういったことをプロの作者の視点から描いたのが本エッセイです。

プロが業界を語るというのはそこまで珍しいものではないかもしれませんが、本作で特徴的なのが作者である長物守氏が3作打ち切りという目に合って一度プロ作家から身を引いていること、作者自身の言葉を借りるなら「敗軍の将が兵を語る」という内容になっていることです。
それだけに彼の口から語られる言葉には、成功した作家によるものとは異なる「重さ」が存在します。

これで内容が全編恨み節全開だったりすると読み物としては別種の面白さが生まれるのですが、本作の場合、当時の事をある程度割り切りながら淡々と事実を連ねていくため、参考になると同時にますます重たい。

果たして、プロの作家はどれくらいの収入があるのか、作品を書く際に編集部からはどのような要請を受けるのか、イラストレーターはどうやって決まるのか、SNSではどういったことを書いちゃいけないのか、などの業界の裏話が語られます。
またそれ以外にも、批判を受けたときの心の持ち方や、執筆が滞った時の回復方法などのアドバイスは、きっと参考になるでしょう。

「自分の作品がもっと多くの人に読まれて欲しい」と夢と希望を持って書くのはもちろん大切です。ですが、その一方で頭の片隅にこうした現実を入れておくと、いつか役立つ日が来るのではないでしょうか。

(小説を書く参考になる作品4選/文=柿崎 憲)

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