幽霊が下ネタを嫌うという都市伝説に関する仮説
よしひろ
幽霊が下ネタを嫌うという都市伝説に関する仮説
幽霊は本当に存在するのか、という問いに対する答えは人により様々だと思います。しかしながら実際のところ、科学がどれだけ発展しようと幽霊が絶対に存在しないということは原理的に証明できないため、この問いに答えられる日はもしかしたら来ないのかもしれません。幽霊肯定派と否定派の論争は決着がつかないのです。
それはさておき、テレビでは霊を取り扱った番組を放送することがたびたびあります。こういった番組内では、霊が実際に存在しているという前提の下で出演者たちは話を進めます。例えば廃墟となった夜中の病院を歩き回ったり、いわくつきの部屋でどこからともなく聞こえるうめき声を検証したりするのが定番でしょう。彼ら出演者は本当に霊を信じている(もしくは番組を盛り上げるためそういうふりをしている)ため、物音やカメラに映った光を霊の仕業と信じ込みます。幽霊を信じない人たちは彼らのふるまいに共感できないかもしれませんが、それでも幽霊を信じる人々の恐怖は現実に存在するものなのです。
そんな恐怖を和らげる方法として、ネット上では様々な幽霊対策法が紹介されています。幽霊肯定派の方々ならこれまでに一つは試したことがあるんじゃないでしょうか。時には「アルミニウムの聖なるパワーに幽霊は弱い」みたいなかなり怪しいものも見つかりますが、中でも異色を放っているものがあります。
それこそが"幽霊は下ネタに弱い説"です。
この説の出所は不明ですが、「下品な言葉を叫んだら突然悪寒がおさまった」、「性的な妄想を始めたら金縛りが解けた」といったような体験談がSNS上で多数見られます。実際にこの効果を検証しようとしたテレビ番組もあったそうです。
というわけで本文では、幽霊が実際に存在するかどうかの議論はさておき、「人間が下品なことを言う、思う」という行動が、どのように「幽霊が退散した、霊的現象が止まった、という風に人間が認識する」という結果に繋がるのかを考察していきたいと思います。
まず、人間が下ネタを使うことによる効果を考えていきます。前提として、いわゆる"下ネタ"には2パターンあり、性的なものと排泄を扱うものに分けられます。どちらに関しても、状況によってはふさわしくない話題とされるということから、このような話題を話す人に共通する事柄が見えてきます。それは下ネタを話しても許される雰囲気にある、ということです。
公的な場所や厳粛な雰囲気の中で下品な話をする人がいないように、会話に下ネタを盛り込むことがあるとすれば、それは気を許した友人とプライベートな場所でする会話などがほとんどでしょう。
つまり「下ネタを言える状態にある」ということは、一種のリラックス状態にあるのと同義なのではないか、と考えられるのです。
このリラックス状態は幽霊を怖がる人が陥っている緊張状態とは対照的なものだと言えます。したがってここから考えられる仮説が、過度な緊張状態にある人はどんなものでも幽霊に結びつけて考えてしまうのではないか、というものです。リラックスした状態では気にしないような些細な刺激さえも、緊張状態にある人間は敏感に感じとる傾向にあります。そのため、小さな物音のような普段気にしないものも、緊張した状態では霊と思い込んでしまうのだと考えられます。
つまり、幽霊が下ネタを嫌って去っていくのではなく、緊張した感情が下ネタによって緩和され、刺激に対して鈍感な状態になったため幽霊を恐れなくなり、結果的に霊の気配が去ったと感じているのではないか、と考えられるのです。
この仮説の裏付けとして、男性が性的な想像をしたり性的なコンテンツに触れたりする際に脳はリラックス状態になり、副交感神経が活性化するという研究結果があります。副交感神経が活発化している状態では、脈拍は安定し、身体は休息状態になります。これが「幽霊を恐れていない状態」にあたると考えられます。
逆に人間がストレスを感じて緊張状態になると、交感神経が活発化した状態になります。こちらが「幽霊を恐れている状態」です。
このことから、幽霊を怖がるという状況が発生した時に、下ネタを言ったり妄想したりすると脳がリラックス状態になって副交感神経が活発化、結果として幽霊に対する恐怖が和らぎ、筋肉の緊張や不快感といったような不調が改善される、というシークエンスが想定されます。この想定のもとでは確かに、「肉体に不調を与えていた幽霊が下ネタによって退散した」という因果関係が成立しているように見えます。
一部の体験談では、アダルトビデオを流していたら霊の気配が消えた、というようなケースもあり、その場合もこの因果関係が成り立っているように感じられます。
このようにして下ネタを利用した心霊現象への対抗手段とその根拠が予想されました。
下ネタが幽霊への恐怖に対して有効であるかもしれない、という仮説の根拠は示されましたが、実際にこの効果を利用する場合はどうでしょうか。
幽霊は苦手だけどどうしても下品な言葉を口にしたくない、その為だけに成人向け商品を買うのが恥ずかしい、という方もおられるでしょう。そのような方たちでも、要は神経がリラックス状態になる行為をすれば良いわけですから、何かすぐに神経を静められるような準備をしておくことが有効だと言えます。
副交感神経を優位にするような行為としては、例えばアロマを焚いたりペットを撫でたりすることなどがあります。寝る前に行う軽いストレッチなども有効でしょう。幽霊が怖い女性にはこちらをおすすめいたします。
結論:下ネタは幽霊を怖がる気持ちに対して効果的である。しかし幽霊自体に対する効果の程は不明。
(あなたがこの仮説を信じたことにより生じた損害に関して一切の責任は負いかねます)
幽霊が下ネタを嫌うという都市伝説に関する仮説 よしひろ @yoshihiro
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます