死者と生者の出会う場所

冒頭からアイヌの描写が出てきますが、実際に津軽にもアイヌがいたそうです。
南直哉禅師が『死者のいる場所』で書いているような、この世とあの世の境にあるような、どこか異界めいた雰囲気。
それでいて、出て来る人物は過去を引きずりながらも確かにそこに生きているという息遣いを感じる。
淡々とした物語ですが、それだけに主人公の静かな怒りややるせなさ、そしてまたほのかな希望のようなものも伝わってきます。
読者も主人公とともに温泉に浸かるようにほっと一息つくことができる、そんな作品です。

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