第14話 めでたい策略

「絶滅したはずの、ドラニュエル族です。たまたま手に入りましてね」

 得意そうにビスラがいった。

「い、生きているのか? 残酷では……」

「もちろん生きていますよ。死んでいてはオブジェとしての価値が半減する。解凍して、飼育できるのも売りの一つですから。それに、残酷などと。ドラニュエルはもともとはるか昔に人間が遺伝子操作で生み出した物。野性化してはいますが品種改良した馬や犬と同じですよ。法的に人権など認められていない」

 なんてひどい。そう思うけれど、言葉がでない。

「大丈夫ですか? マイニャさん」

 体を誰かに支えられ、マイニャは自分が倒れそうになったのを知った。イーサリーザが心配相に覗き込んでいる。マイニャはようやく忘れていた呼吸を再開した。

「あ、ありがとうございます、イーサリーザ様」

「震えていらっしゃいますよ。少しお疲れのようです。おうちに帰られて、休んだ方がいいのでは」

「おやおや、こんなに楽しいパーティー、途中で退席なんてできないですよねマイニャさん」

 ビスラが目配せをしてきた。つまりはここから出るなという事。

「ええ、その通りですわ」

「でもあまり無理されては……」

「いいえ、大分気分がよくなりましたわ。もう大丈夫」

 目眩(めまい)を抑え、マイニャは二人に微笑んで見せたとき、メイドの一人が歩み寄ってきた。手に白い封筒を持っている。

「マイニャ様。お屋敷の方からお手紙です」

「私に? まあ、ナルドからだわ」

 見慣れた筆跡を見たからか、ほんの少し気分が落ち着いた気がした。

『宴をお楽しみの所、失礼をいたします。引越し先で行う、近所を招いてのパーティーの件ですが、ニワトリと酒の準備ができました』

 マイニャはしばらくキョトンとしていた。引越し先でパーティーなんて企画した覚えはないけれど。そもそも、引越し自体が嘘なのに。

 少し考えてその手紙の意味が分かった瞬間、もうちょっとで笑い転げるところだった。

 ニワトリ(カシ)と酒(ダイキリ)! 二人は生きている! そして何か、計画を立てているに違いない。この船を、ガウランディアさんを、私を救うための計画を!

「まあ、どんないい知らせが書かれていますの? 封筒を開ける前とは別人のよう」

 イーサリーザが手紙をのぞきこもうとしたとき、カン高い悲鳴が挙がった。この室内ではない。壁に取り付けられたモニターから流れる外の音声だ。

「な、なんだぁ?」

「ジェイソ様、あれを!」

 四角い画面の中、海に浮かぶジョイ・ジェム号の横腹が映し出されている。そしてそれをコの字に囲む船着場には、少し距離を置くようにして色とりどりの頭が群がっていた。

 その人ゴミをかき分けて、誰かが全力疾走をしていた。

 ジョイ・ジェム号のカメラが、その迷惑な人物をアップにする。

 それは、ボロボロの服をまとって、赤い髪を逆立てた男だった。彼は、二十世紀風のウエディングドレスを着た美女の手を引いている。

 必死になって走るカシに突き飛ばされた見物人が、抗議混じりの悲鳴をあげる。

「カシさ……」

 叫びそうになった言葉をマイニャは慌てて呑み込んだ。

 カシがいるということは、後ろの花嫁はダイキリに違いない。二人して、一体何を?

 ド派手な髪をした男は、立ち入り禁止の縄をくぐり抜け、ジョイ・ジェム号に続く桟橋に駆け上がった。入り口を守るガードマンに両肩をつかまれて止められる。地面に組み伏せられそうになりながら、カシは必死で片手を伸ばす。

「ジェイソ様!」

 外部マイクが拾った彼の声は、すがりつくような必死な響きがあった。

「俺達を乗せてください!」

「お願いします!」

 花嫁ダイキリも一緒になって叫ぶ。いつもながら、普段は低めのいい声が女装するとどうしてあんなにかわいらしい声に変わるのか。マイニャはそんな事をチラッと考えた。

 ダイキリは、走るためたくしあげていたスカートの裾を離し、胸の前で組む。魔神で作られた本物そっくりの胸が荒い呼吸をするたびに上下していた。

「父上の金儲けのために、好きでもない男の物になるなんて嫌! 私、この人と一緒に結婚式から逃げてきたの!」

「早く! 追っ手に追いつかれてしまう。今日は愛を称える祭りの日。真実の愛の女神サナフィの名と、貴方の幸せに免じてお助けください!」

 ジョイ・ジェム号の中にいる者も、外にいる者も、皆ガードマンの手を振りほどこうとするカシとダイキリに釘付けになっていた。

「なんと、花嫁の略奪か!」

 ジェイソの口がぽかんと開いていた。

 無駄に暴れる意思はないと見たか、ガードマンがカシを放した。立ち上がり、振り向いたカシはダイキリの両手を握り締めた。ぎゅっと目をつぶって、肩に力をいれると、大きく息を吸う。

「身分違いとはいえ、私は…… 私は、この方を愛しているのです!」

 うおおおお、という歓声が港からわきあがる。冷やかす口笛と拍手は、スピーカーを壊してしまいそう。

 マイニャは両手で口元を隠してうつむいた。どんなに笑いを抑えても、肩がヒクヒク震えるのは止められない。もし今ここにランプの精が現れたとしたら、第一の願いは間違いなく『思いっきり笑わせて』にするだろう。

「兄ちゃん、かっこいい!」

「お嬢さん、幸せになれよ! 応援するぜ!」

 すっかり騙された人々が恋人達に祝福の言葉を投げつけている。

「騙されてはいけません、ジェイソ様!」

 ビスラがつかみかかりそうな勢いでジェイソに訴えた。

「あいつらは、悪名高い流れ者。この船にふさわしい者ではありません。ガウランディア、カシ、ダイキリ、この名前を調べてください」

(よ、余計なことをっ!)

 マイニャはカシのように舌打ちをしたくなった。カシ達は、お行儀の悪い仕事をしていると言っていた。ケナビェイのように、カシ達のデータがどこかにあってもおかしくない。

「たしかに、ビスラ様の言う通り。星への密入国、牢獄破り、罪人の無断解放……」

 召使が腕時計ほどの端末画面をジェイソに見せる。カシとダイキリ、それにガウランディアの顔写真が、彼らが犯した罪の横に載っている。

「げ、あの花嫁、男なのか!」

 カシ達の正体がばれてしまったというのに、目を丸くしたジェイソの反応がおもしろくてマイニャの笑いの発作がまたぶり返してきた。

「おのれ。『もし本物の恋人同士だったら誓いのキスをしろ』とでも嫌がらせを言ってやろうか」

「い、いくらなんでも、それはかわい、そう、ですわ」

 マイニャはお腹を押さえながらなんとか言葉を振り絞った。

「言った通りでしょう! きっと、何か詐欺でも行うつもりでこの船に近づいたに違いありません。今すぐ追いはらった方がいい!」

 船の中であれこれ話し合っている間、下ではますます騒ぎが大きくなっていた。

「おいおい! 何やってるんだよ、ジェイソ様よ」

 酒で顔を真っ赤にしたオヤジが怒鳴る。

「自分だけ幸せになりゃいいってかい。力貸してやんなよ」

「ジェイソ様、乗せてあげて! 今日は愛を称えるお祭りなのよ」

 船内の客からも、期待をする視線がジェイソにそそがれる。港から聞こえる祝福の口笛も、ブーイングに変わり始めていた。

 無理もない。今日はお祭り。ばかげたドンチャン騒ぎは皆大歓迎なのだから。

「……しかたない。一度船に乗せよう。ジョイ・ジェム号の中でこっそり捕まえることにする。あの二人の映像を、警備員全ての端末画面に送っておけ」

 ジェイソは小さく呻いた。

「しかし!」

「だが、ビスラ。今ここであの二人を傷つけたら、私は悪人になってしまう。これだけの人数に、あの恋人達が犯罪者だと説明するのは容易ではないからな。暴動だっておきかねん」

 そしてたぶん、それこそカシ達の計算なのだ。

 ジェイソは会場の中に置かれた台の上に乗った。その台の後ろには屏風のような白いスクリーンが張ってある。スクリーンにはたくさんのカメラが仕込まれていて、様々な角度から撮ったジェイソの姿を一つにまとめ、立体映像として外へ映し出す。

「恋人達よ! もしその愛が本物ならばこの船に乗るがいい!」

 スピーカーから溢れる大きな歓声に、客の一人が耳をふさいだ。誰かが気を利かせてホログラムのオーケストラに明るい曲に変更する。

 ジェイソは会場の皆に呼びかける。

「ここにいる方々もいいですな。素性の知れない者などこの船にふさわしくない、と文句を言いますな」

 賛成の拍手が鳴り響いた。

 スクリーンの中でカシとダイキリがほんの一瞬視線を交わした。恋人同士ではなく共犯者同士が交わす合図の視線を。

 間違いなく愛は偽物だったけれど、それでも二人はジョイ・ジェム号に乗り込んだ。


 演説台を降りながら、ジェイソは呟いた。

「それにしても、物騒になった。昔はどんな盗人もある程度の位を持っている物には手をださなかったのだが」

「手を出さざるを得なくなってしまったのでは? 最近のミルリクは荒れてますから。食うに困る者も多いでしょう」

「ふうむ、どうやら私は遠回しに責められているようだ」

 苦笑して、ジェイソはさっきカシ達のことを調べた部下を呼び寄せた。

「あの恋人達は、他の客人の見えない所にお連れして捕らえろ」

 その命令を聞いたビスラが唇の端を吊り上げたのをマイニャははっきりと見た。

「私はこれで失礼しますよ。マイニャさんはこのままパーティーを楽しむといい」

(船から出るなというわけね。ジョイ・ジェム号がバラバラになってしまうまで)

 船の出入り口を見張る事など簡単だ。宝石で彩られたこの棺桶から逃げ出そうとすれば、この首が吹き飛ぶ。

(どうやっても、お父様の発明で私を殺したいようね)

 マイニャはせめてもの抵抗にビスラの背中をにらみつけた。けれどその抵抗は、気づかれもしなかった。


「ケナビェイ、行くぞ」

 宴会場を出たビスラは、廊下に寄りかかっていたシッポ無しのダイザーに声をかけた。ケナビェイは、パーティーにふさわしくタキシードを着ていて、のどもとには小さな蝶ネクタイまで結んであった。組んでいた腕をといてビスラの後を追う。

 その時、金色のカフスボタンで飾られた袖から、水銀のような物が滴り落ちた。放たれた金属細胞は誰にも見とがめられる事もなく、壁のわずかな接合部分から船の内側へと入り込む。

 ビスラは、それを何となく冷めた目で見つめていた。これから、この金属細胞はプログラム通りにメインエンジンに取りつくはずだ。

 この船は落ちる。なんとも、あっけないものだ。かといって、変な妨害に会って予定通りに行かなかったら、それはそれで腹が立つのだが。

「オレ、用事アル。ココニ残ル」

 ケナビェイが急に足を止めた。

「なんのために?」

「アノ、赤イ頭…… 来テイル。決着ツケル」

「好きにしろ」

 もうすぐ沈む船で人探しとは物好きな奴だ。まあ、このシッポ無しがどこで死のうと関係がない。

 ビスラは、フンと一つ鼻を鳴らすと歩き始めた。昇降口とは違う方向へ。 


 ニセの恋人達は、召使に案内されてジョイ・ジェム号の中に侵入して行った。

「まあ、ステキな船!」

 髪にくっついた紙ふぶきを払いながら、ダイキリは周りを見回した。

「では、まず着替えてもらいましょう。せっかくのドレスが汗と泥で汚れてしまっていますよ。特に男の方の服はぼろぼろですし」

「はあ、すまないっすね」

 身分違いの感じを出すために、カシは川べりに住む貧しい漁師の格好をしていた。自分の体より二周り大きい服はあちこちほつれている。

 カシとダイキリは、船の豪華さに見とれるフリを続けながら、自分が今通っているルートと、頭に叩き込んでおいたジョイ・ジェム号の地図とを照らし合わせる。

 ジョイ・ジェム号の廊下は、まるでどこかの神殿のようだった。壁に塗られた白い漆喰には、ペイズリーに似た柄が掘り込まれている。飾りの柱が等間隔に並んでいて、このまま進めば本当に教会か神殿がありそうな気さえする。

「では、こちらに」

 通されただだっ広い部屋だった。一番後ろを歩いていたダイキリが部屋に入った瞬間、自動ドアが閉まる。ノブの上の小さいランプが、緑色からロックを表す赤に変った。

 同時に、ジュウタンで鈍くなった靴音が響く。小さなタンスや、ベッドカプセルの陰から、銃を持った男達がわいて出てきた。

「動くな! 大人しくしていれば殺しはしない」

 今まで笑顔で案内してくれていた男が、急に態度を変えて怒鳴る。

「きゃあ!」

 かわいい悲鳴をあげ、ダイキリはちゃっかりカシの背中に隠れた。

 カシが『テメエ!』という視線を花嫁に向けたのを、警備員が気づいたかどうか。

「い、一体何を……」

 ダイキリの切れ長の目に涙が浮かんでいる。

「芝居はやめろ。カシとダイキリだな。何を企んでいるのかは知らないが、お前達が罪人だということは調べがついている」

「……」

 今流行りの口紅を塗ったダイキリの唇が、少々邪悪に吊り上がる。こっちの正体がバレることなど計算済みだ。

「おやおや。仕事がお早いことで。その通り、呼ばれてないけど来てみました」

 不審者カシはのたまった。

「何をたくらんでいるか吐け! そうすれば捕まえた後少しは手心加えてやる!」

 ここで金属細胞の事を話そうかとダイキリはチラッと考えた。けれどそれは賢くないだろう。

 まず、ジェイソに信じてもらえるかどうか怪しい。仮に信じてもらえたとしても、細胞を探し出すには当然少しの時間がかかる。その間にビスラにこっそり回収でもされたら、証拠のないこっちはただの嘘つきなテロリストだ。確実に細胞が船を狂わせた所で金属細胞を奪い取るしかないだろう。

「断る!」

 ダイキリは隠し持っていた魔神の壷を開けた。

 電撃銃の弾は、魔神の盾に弾かれる。

「行くぞダイキリ!」

 シャハラザードが扉の非常ボタンを打ち抜いた。何か事故があったとき閉じ込めを防ぐボタンは、幸い職務に忠実だった。

 開いた自動ドアから、カシとダイキリは廊下へ飛び出した。

「確保失敗!」

 警備員の一人が端末に怒鳴る。

「応援要請! 23エリア!」

 食事の合図を聞いた犬の群れのように、警備員の足音がぞろぞろ近づいて来ていた。

「その二人を捕まえろ!」

 警備員長はほくそ笑んだ。

 カシとウエディングドレス姿のダイキリの映像は、すでに全警備員に通知されている。どこに逃げようともすぐに居場所は知れるだろう。逃走劇は、すぐに終るはずだ。


 二人は突進を続けた。角を曲がると、廊下の奥に行く手を塞ぐようにして警備員が横一列に並んで待ち構えていた。引き金に指がかかる軽い音が響く。

 ダイキリが艶っぽく微笑んだ。

 ドレスが一回り大きくなり、空飛ぶ羽衣のようにふわりとダイキリの肌から持ち上がった。ドレスの輪郭線が少しずつ淡くなっていった。最後には白い霧のようになり、美女の体をぼんやりと包む。

「イッ?」

 警備員の誰かが銃を落とした。

 自分の体をぬぐうように、白くて細い腕が斜めに振り下ろされると、体を隠していた霧が、風を受けたように飛ばされて行く。

「おおおおおおお?」

 警備員たちが色めきたった。

「……? 何を興奮している? 私が男だという事くらい、とっくにバレていると思ったが」

 霧の下から現れたのは、白い布地に金色の刺繍が施された上着。裾が膨らんだ黒いズボンという、貴族か王族の格好をした男の体。

 警備員達の落胆とやり場のない怒りの溜息の中、ダイキリはドレスにしていた魔神を鎌に作り変える。

 カシがダブついた服を脱ぎ捨てる。取りやすいように切れ込みが入った服の下から現れたのは、自動車が発明されたはるか昔から変わらない技術者の象徴、色気も何もない灰色のつなぎだった。

 正面から新しくなだれ込んできた警備員達は、カシとダイキリに伸ばしかけた手を一瞬止める。無理もない。彼らが探しているのはウエディングドレス姿の花嫁と、ボロを着た漁師姿の男なのだから。

「そいつらでいいんだ。捕らえろ!」

「捕まらないよ~ん」

 シャハラザードとドニアザードが吠える。警備員達の頭から数十センチ上の壁に、出来の悪いスポンジのように荒い穴が開く。もともと、ジェイソの部下を殺すわけにはいかない。ちょっとした威嚇(いかく)射撃だ。

「ひるむな、行け!」

 警備員長が指示を出す。

「イッヒッヒッヒ」

 カシが不気味な笑いを浮かべ、上着のポケットに両手を突っ込んだ。

「ジャーン」

 効果音つきで取り出したのは、紙でできた拳大の丸い玉だった。中心から、導火線がひょろっと飛び出ている。それは何百年も昔から変わっていない品。

「祭りの会場でもらった花火。しけっちゃって煙しか出ないけど」

 小さなライターで導火線に火をつけると、カシは花火を放り投げた。緑色の煙がふき上がる。

「うわ、ちょ……!」

 パニックになった警備員達の悲鳴を背後に、カシ達は廊下を駆け出した。

『煙が検知されました。消火活動を開始します』

 後ろから無機質なアナウンスが追いかけてきた。

 侵入者二人組は、そのままトイレに直行する。並ぶ個室に誰もいないことを確認すると、二人は壁によりかかった。足を止めて息を整える。こんな所に隠れてもどうせすぐに見つかるだろうが、ちょっと休憩するには十分だ。

「監視カメラのない所。トイレにプールに温泉地ってね」

「別のカメラはありそうな場所だがな。何とかここまでは予定通りか」

「これからも予定通りにいくさ、きっと」

「ならばいいがな」

 素のダイキリにしてはめずらしく、彼はそこでフッと笑みを浮かべた。

「それにしても、意外と演技が上手いなカシ。笑いを抑えるのに大変だったぞ」

「それ以上言うな、やめてくれ! さっきのアレは、すでに『俺の消したい過去ランキング』堂々の二位にランクインされているんだ」

「一位がなんなのか心底気になるが、情けで聞かないでおいてやる」

「ちゃかすなよ。野郎の手ぇ引いてた俺の身にもなってくれ」

「安心しろ、不愉快だったのはお互い様だ」

「というわけで、気分直しに本物のべっぴんさんを二名、探し出すとしようぜ」

「姫君みたいなべっぴんさんと、ドラゴンみたいなべっぴんさんをな」

 パニックを防ぐために、侵入者があったことは客達にはナイショにされるだろう。そこも狙い目の一つだ。何も知らない客の前なら、ダイキリはパーティーに呼ばれた金持ちに、カシはジョイ・ジェム号の技術者に見えることだろう。

 二人は互いのイヤホンをテストして、散って行った。

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