薄い本にかける熱い思いと、恋と青春の一ページ。

 同人誌、ネットでは揶揄するように「薄い本」と呼ばれる、主に商業作品の二次創作を指します。
 本作の主人公は、同級生の女の子から不意に同人誌、それも人気アニメの百合、女の子同士の恋愛ものを作らないかと迫られます。
 戸惑いつつも申し出を引き受ける主人公。作画する設計図、ネームを担当しますが――――

 二人のやり取りを通じて、同人誌を作る過程、印刷所に頼むところや料金、どんなジャンルにするか。
 創作する上で、自分の今現在の力量、自尊心と自己満足とのせめぎあい、ほかの上手な人と自分を比べることでの劣等感。
 ヒロインの色んな感情が描かれています。

 それと同時進行で描かれているのが、二人の仲の進展ぶり。
 資料写真を撮影するために、アニメの舞台になった海岸に聖地巡礼したり、ヒロインの原稿を手伝うために家で二人きりで作業したり。
 主人公目線で語られているため、読者がもどかしい思いをすることも。

 そして念願の本ができあがって、いざ即売会に。
 そこでの経験は二人に何をもたらすのか。

 作中作のアニメのテーマソングまで入れる凝った構成。
 同人誌のことを全く知らない方にも解るように作中人物に語らせることで、プロセスがわかるお仕事ものとしての側面も。

 昨今、市民権を得つつあるオタク。そんな二人のやり取りが愛おしくなるラブコメディー。

 オタ、非オタともに楽しめる一作です。
 

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