創作を志す全ての人たちへ捧ぐラブコメ!

 オタクの恋なんて、チョロいもんである。ちょっとでも優しくされようもんなら、たちまち落ちてしまうものだ。
 まして、「誰でも良かったわけじゃない」などと暗に特別であるかのように扱われれば尚更である。……あぁ、過去を思い出す、ココロガイタイナー。

 のっけから脱線してしまった非礼を詫びつつ、これは、創作を志す全ての人の目に触れて欲しい作品である。

 その読みやすさは決して安っぽいからではなく、スッと入り込んでくる文章。そして、さりげなく描かれた複線は、危うく読み逃しかねないほどに自然で巧みでもある。

 同人誌を作成しながら「同好の士」である二人が「恋人同士」に距離を縮めていく様は尊く、薄い本ならずとも胸が厚く、否、熱くなり、爆発を禁じ得ない。

 だが、それだけではない。
 所々に差し込まれる『夢の夜空のTwinkle』の歌詞に凝縮されるこのストーリーから目を背けてはならない。

 創作という面倒臭い生き方、周囲との距離感を量りかね傷付くことを恐れている姿。
 理想という誇り高く純真な大輪の花に向かい手を伸ばしながら、現実という雑草さえ無い深い闇の沼に無垢な心を沈ませていく。

 売れない? 評価されない? 読まれさえしない? 面白くない? そもそも才能がない?

 じゃあ、何で?

 好きだからだ。そうだからだ。そう、なってしまったからだ。

 或いはその言葉が、SNSでのRTやいいねが、レビューや評価の星が、ひとつ。ただひとつでも心に光を灯し、誰かが見てくれている、その一輪の差し出された花が救ってくれることもある。

 時に、非凡でまばゆい誰かの大きな光は、その小さな光をきらめかせないかもれないが。

 言葉にせずにはいられない、形作らずにはいられない、心から好きなもののことは、誰に向かっても正直に好きだと言える。
 その正しい姿を、この物語は我々に教えてくれるものである。

 だからこそ、私は声高に誰に向かっても、こう言おう。

 私は、この作品が大好きである!――と。

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