冒頭の無差別攻撃から始まる、抑え切れない負の感情の悲劇。
そして東京から始まる、ちょっとした事件。
そのふたつが思わぬ関係性を見せて絡み合っていく様子が面白く、特に後半の『へぇ、当たった。それなら今、俺、乗ってるよ』のセリフには鳥肌が立った。
ややタイトルの部分に辿り着くまでの流れが長いようにも思うが、13万字という文字数を全く感じさせない、ぐいぐいと読者を作品に惹きつける力はお見事の一言に尽きる。
また、エンタメ作品でありながらも、作中や追記にて書かれているように、敗戦からの復興を果たした日本は今の時代にこそ担うべき役割があるのではないかという問い掛けには考えさせられるものがある。
人類の滅亡までの時間を示す「世界終末時計」なるものがあるが、その時間を止めることが出来るのは、案外自分たちなのかもしれない。
twitterで作者さんをフォローさせていただいているので、流れてくるTLから中東情勢のお話だというのは予備知識はあった。
タイトルに「撃ち落とされる」とあるので、なるほどRPGでヘリコプターを落とす側あるいは落とされる側の戦争アクション的な話なのかな――とか思ってたら全然違った。
超濃厚な軍事サスペンス。
テロ集団とひょんなことからその尻尾を追うことになったアウトローとその仲間による、世界を股にかけた追跡撃。
ひとこと紹介にあげたその三要素が、国境を越えながら見事に絡み合い最後の瞬間へと繋がる、そのストーリー運びは見事としか言うほかありません。
そしてこの話を語る上で欠かせないのがシリア情勢とISの内情。
目を覆いたくなるような事実――今現在、この世界に起こっている悲劇その連鎖の一端が、架空とはいえここには描かれている。
はたして主人公イザは――いや人類は、この悲劇を回避することができるのか。
謎とスリル、多くのアンダーグラウンドのエッセンス、イスラム世界への敬意、そしてこの世界への問題提起を含んだ本作品。
映画館に見に行かなくっても、これはカクヨムで読めるのだ。
オススメです!!
この作品の一番の魅力はやはり実在する言葉を用いてよりリアルに近づけている点と言えます。
やはり、実在する言葉を用いることでより作品に引きつける力があるというのがこの作品のいいところです。
そして、何よりも言いたいのは実在する言葉について本当によく調べていることがよくわかることで、どの言葉もきちんとした箇所で使われており、より一層物語に引き込んでくれました。
最後にかけての展開は緊張感がありはやく読みたいと思わせるほどの完成度で非常にサクサクと読み進めあっという間に読み終わってしまいました。
また、完成度を支えるための様々な要素、登場人物の魅力であったり、舞台の設定であったりと言ったものがやはりきちんとしているからこその最後であると大きな声で言わせてください。
現実的なお話が好きな人ならぜひ読んでみてください。
何ともタイムリーな題材を扱ったサスペンス小説でした。
基本的な内容は、概ねあらすじ通りなのですが、物語の根幹を支えている物語背景のリアリティには脱帽。
そして、それら一つひとつの要素が有機的に接続し合って、無駄なく一本の物語の筋立てを構成している、作者さんの高い作劇技術に感嘆せざるを得ません。
リアリティのある設定が単純に網羅されているわけじゃなく、何と言ってもちゃんとストーリーを描き出す上での意味を持って結び付いているところが素晴らしいのです。
世界各地で連鎖的に動いていた複数のストーリーラインが、物語中盤前後から綺麗に一本のメインエピソードへ収束していく展開の美しさはお見事。
本格派の硬質な社会派ドラマがお好きな方は是非ご一読を!