鮮烈なリアリティと美しい作劇。戦慄と緊迫の本格社会派サスペンス!

何ともタイムリーな題材を扱ったサスペンス小説でした。
基本的な内容は、概ねあらすじ通りなのですが、物語の根幹を支えている物語背景のリアリティには脱帽。

そして、それら一つひとつの要素が有機的に接続し合って、無駄なく一本の物語の筋立てを構成している、作者さんの高い作劇技術に感嘆せざるを得ません。
リアリティのある設定が単純に網羅されているわけじゃなく、何と言ってもちゃんとストーリーを描き出す上での意味を持って結び付いているところが素晴らしいのです。

世界各地で連鎖的に動いていた複数のストーリーラインが、物語中盤前後から綺麗に一本のメインエピソードへ収束していく展開の美しさはお見事。
本格派の硬質な社会派ドラマがお好きな方は是非ご一読を!

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