不思議な不思議な世界観のお話しです。
一読しただけでは理解が追いつかない不可思議なお話し
レンタルと推しという、二つの虚構に遭遇し、主人公は自身の心との葛藤から、一つの虚構で答えを導き出していくのですが…
その手引きの美しさには、ミステリーや推理小説のテイストが効いていて、思わず足元を掬われてしまいます。
『女の子はSugar and Spiceで出来ている』という慣用表現(らしきもの)を何処かで見た記憶があるのですが、主人公がまさにこの言葉に当てはまるのかなぁ〜と思ったりしています。
甘いだけが全てじゃない
ピリッと辛味も持っている
さあ、甘さと辛さに彩られた世界を
アナタも覗いて見ませんか?
素敵な作品に感謝と賛辞を
彼氏に別れを告げられた傷心の主人公。傷を癒すためには新しい恋がいいと言うけれど、そこまでは踏み出せずにレンタル彼氏のサービスを利用する事に。そこに現れた「声」は、なんと推しのVTuberと同じ声で――。
バーチャルやリアルのいろいろな関係性をくるくると回しながら、すっと読み通せてしまう素敵な短編のお話でした。
特に好きなのが主人公。いろいろな事が起きるんすけどね、どんな時でも「前」へ進もうとするんです。止まらない。止まりたくない。考えて、止まりたいけど止まらない。好きだ。選択した「正しさ」も大好きです。
短い中でいろいろ展開し、ぐんぐん進めて行く系のお話なので、短編の漫画とかで見てみたいなあ、なんてことも思いました。
彼女の前進を止めないスタイルを覗いてみたいと思った方、ぜひご一読を。
私自身はアニメオタクで、好きなキャラも少なからずいるのですが、正直なところVtuberは詳しくありません。
どこがいいんだろうと思っていたのですが、V好きな人の話によると「声優さんがしゃべるアニメキャラみたいな、いかにも作ったプロの語りじゃないところがいいんだよ。素人が普通にしゃべっているのが逆にリアリティあって、本物の異性と接しているような親近感がある」とのことでした。それが正しい見解かはわからないのですが、言われてみればなるほど沼に堕ちる人がいるのも納得という気がします。以前にアイドルはメチャクチャな美形より、普通のクラスに一人ぐらいいそうなちょっと愛嬌のある人の方が「何となく手が届きそうな錯覚が生じて人気が出る」という話も聞いたことあるもんなあ。
かくいうわけで、こちらの作品は失恋をきっかけにVtuberにハマってしまった女性のお話です。恋の痛手を推し活で埋める、いかにも現代的なテーマですね。おまけにこの主人公、そこへ加えて「レンタル彼氏」にも手を出してしまうようになるから、元カレを忘れるためとはいえ傷心の深刻さたるや相当なものです。ところが虚を衝かれてしまうのは、なんとそれで呼び出したレンタル彼氏がVtuberの「中の人」だったという展開。
Vtuberやレンタル彼氏をそれぞれ題材にした作品は他にもありますが、このふたつを掛け合わせた小説は初めて読みました。まさにありそうでなかった一作?でしょうか。
推しに課金してハッピーになれたから「実質無料」などと宣う主人公、こんなオイシイ事態に遭遇して果たしてどうなってしまうのか――……
というのは、もちろん読んでみてのお楽しみ。
終盤の意外性抜群な展開を、さてあなたはどう思うか。理性と欲望のバランスを取ることの難しさというのは、実は推し活の本質そのものに対する問い掛けかもしれません。