日常と非日常の境界線を踏んでしまったような

光と影が永遠に終わることがない円環を描き続けているように。日常の裏には非日常が背中あわせにひそんで、誰かが踏んでくれるのを今か今かと待ち続けているのではないかと、こちらの小説を読んでいるとなにか薄ら寒い予感を覚えました。

普段ならば気にならないことがふと気になってしまうことは、誰にでもあることだと思います。ずっと通っていた道に、その場にあるはずもないものを見つけてしまったときのような。これまで何度も通りがかっていて気がつかなかったのか、それともいま、現れたのか。
曖昧な境界を、気づかずに踏んでしまったようでぞくりとするのだけれど、もっともっと、そちら側に歩み寄ってみたくなります。いえ、歩み寄らずにはいられなくなります。

なんとも好奇心を誘われる、素敵な小説でございます。
どの御話も情景描写が素晴らしく巧みで、不思議な風景がありありと目蓋の裏に浮かんで、実際にその場にいるようなきもちになりました。

ひとつ、読めば、あなたもきっとその不思議な世界から抜けだせなくなるはず。