ひたすらに美しい狂気

一つのヴァイオリンを巡る物語。

まさに「物語られる」話は、取り留めのない戯言(たわごと)のようにするすると近寄り、私を取り囲む。そして、物乞いのような語り部から紡がれる独特のリズムに乗って、気付けば不思議な物語の中に惹き込まれている。

歪んだ才の光太郎、眉目秀麗の橘、美しい音無嬢。三人が紡ぎ出すのは血と欲望が混じったきらきらとした奇怪な関係。

ヴァイオリンの耽美な響き。音楽が持つ精美。人の欲念。
それらが見事に絡み合い、息を呑む調べを奏で出す。

「ツィゴイネルワイゼン」
この曲を聞いてから読んで欲しい。

最後に、ひたすらに美しい狂気を感じることが出来るから。

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