概要
水は空へのぼり、やがて帰ってくる
先輩が失踪した。
私は、先輩から聞いた奇妙な話を思い出していた。
夏と、水と空の話だ。
私は、先輩から聞いた奇妙な話を思い出していた。
夏と、水と空の話だ。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!澄み切った景色の中の冷たい恐怖
行方不明になった大学の先輩が以前に語っていた、奇妙な思い出のお話。
まさに怪談、といった趣の作品です。趣味で怖い話を集めている『私』が、後に失踪することとなる先輩から聞かせてもらった、幼い頃の不思議な逸話。冒頭ですでに「失踪」という不吉な結果が確定されているのと、伝聞という形式の扱い方がとても巧みで、するする物語に引き込まれてしまいました。
お話の空気感が好きです。開放的な自然の風景に、空と水の青さを感じさせる描写。加えて、まるで幻想的な出会いのようなものまで描かれており、一瞬怪談であることを忘れそうになってしまうほど。
ズンズンのし掛かってくるような怖さはなく、見える景色はとても綺…続きを読む - ★★★ Excellent!!!「怖い話を集めているのって、君?」先輩が言った。そして、失踪した。
小さいころから怖い話が好きで会う人合う人から怪談を蒐集している私が出会った先輩との一幕。
――あまり怖くないけど。
そう言って、語り始めた先輩の話は荒唐無稽ともいえる、不思議な話だった。
先輩の語る話には身をすくめるほどの恐怖や畏怖は含まれていません。むしろ、恋慕、思慕といったほほえましい感情を掻き立てるような話です。
ですが、それを語る先輩。そして、失踪後の出来事。これらが組み合わさった時、すっと知らないうちに身に入ってくるような怖さが辺りを包んでいることに気付くでしょう。
怖さもあるのですが、全体的にしっとりとしていながらも爽やかな雰囲気です。そのため、不思議と幻想の霧雨に包…続きを読む