(おまけ)土佐弁キャラについて

※今回の話は“土佐弁キャラ”を描こうとする人向けの内容です。


 土佐弁を使うキャラ・人物の代表例として、まず挙げられるのは坂本龍馬です。

 認知度・人気度ともに土佐弁キャラNo.1であることに異論を唱える人はいないでしょう。

 漫画であれ小説であれ、幕末が舞台の作品であれば、たとえ主人公でなくても彼が出演する機会は非常に多いと思います。


 ですが、そういった作品を読んでいると、たまに違和感を覚えることがあります。

 もちろん坂本龍馬が実際に喋っていた土佐弁がどのようなものだったのか、正確なことは誰にもわかりません。時代によって、そして地域によって、同じ土佐弁でも変わりますからね。

 ですが、“土佐弁キャラ”として描く以上、そのキャラは土佐弁を喋らなければなりません。

 では、どのような喋り方がしていないのか。

 違和感の中身を考えてみたところ、下記の3パターンに分けられることに気付きました。



【パターン①:ぜよぜよキャラ】


 語尾に「ぜよ」を付けただけのもの。

 これではただの口癖です。

 土佐弁には「ぜよ」だけでなく、場面に応じた語尾があります。


 たとえば美味しいものを食べたときに出てくる台詞。


「美味いぜよ」(美味いよ、と語りかける)

「美味いちや」(美味い、と感嘆する)

「美味いにゃあ」(美味い、と感心する)

「美味いがよ」(美味い、と誰かに説明する)

「美味いきに」(美味いから、と誰かに促す)


 このように、その時々の感情に応じて様々な言い方があります。

 実は語尾も奥が深いものなのです。



【パターン②:標準語が混ざる】


 前述の語尾を使いこなせたとしても、次の罠があります。

 たとえば下記の台詞。


「さすが採れたてだから、まっこと美味いにゃあ」


 後半が完璧な土佐弁である分、前半の標準語が非常に目立ってしまいます。


 土佐弁を使うキャラは、特に下記の2つはまず言いません。

「〜だから」→「〜やき」

「〜している」→「〜しゆう」「〜しちゅう」


 土佐弁キャラが「〜だから」とか「〜している」なんて言ったら、格好をつけてという印象を受けます。(そういう印象をあえて出す意図があれば、もちろんアリです。)


 土佐弁キャラの台詞のなかで標準語が残っていれば、それは土佐弁に変換できるものではないか、と疑ってみると良いかもしれませんね。



【パターン③:方言の表記揺れ】


 土佐弁の文法を使いこなせるようになっても、まだまだ安心はできません。

 次の三つの台詞を比べてみましょう、


「おまん、闘わんが?」

「おんしゃ、闘わんがか?」

「おんしゃあ、闘わんがかや?」


 全て「お前は闘わないのか?」という意味ですが、受ける印象は少し異なります。

 もちろん土佐弁としては、どれも間違いではありません。


 標準語でも、性格や年齢によって使う言葉が違いますよね。

 方言でもそれは一緒です。同じ場面でも使う人の性格によって使う土佐弁が異なるわけです。


 つまり、同じ人間が喋る言葉であれば、そこになんらかの統一性は必要になります。

 さっきまで「おまん」と呼びかけていたのに、別の場面で「おんしゃ」と呼ぶようでは、キャラのブレに繋がってしまいます。

(普段は「おまん」を使うのに、ときにだけ「おんしゃ」と言う、というテクニックなら、もちろんアリです。)


 大事なのは、そこに一貫性を持たせること。

 それが出来れば、一本芯の通った“土佐弁キャラ”となるでしょう。



 こんなところでしょうか。


 土佐弁に限らず、方言はキャラの設定に非常に重要な要素です。

 上手く使いこなして、ぜひ生き生きとしたキャラを描いてくださいね。

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めざせ土佐弁マスター 穂実田 凪 @nagi-homita

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