いまや将棋が空前の大ブームである。
少し前に藤井総太くんが史上最年少でタイトルを取ったときは、ゴールデンタイムのニュースでも流れていた。
でも実際に自分でやるとなると途端にハードルが高くなるのも事実。
動かし方くらいは知っていても、そのあとの専門用語が非常に多くて大変だ。
矢倉?棒銀?振り飛車?なんのこっちゃ。
でも、この作品は主人公の悟が初心者なので、それに向けて丁寧に教えてくれるので専門用語が自然と頭に入ってくる。しかもラブコメ仕立てで読みやすい。
さらに各話タイトルが将棋の格言にもなっていて、キャラがしっかり説明してくれる。読み終わる頃にはきっと棋力が上がっていること請け合い!
でも、ひとつだけ問題がある。
「頼れる後輩の真菜さん」VS「生意気な従兄妹の双葉ちゃん」
(振り飛車党) (居飛車党)
どちらを応援するべきか。
この問題は将棋と同じくらい難しい。私は最後まで答えを出せなかった・・・。
サラリーマンの稗村悟は年下の従妹・双葉に将棋でボロ負けしたのを機に、将棋に詳しい後輩・南條真菜から教わり、"指す将"を目指す!
振り飛車、居飛車、棒銀、腰掛け銀、早繰り銀……、まったくの素人から少しずつ定跡や戦術を学んで、先人たちが積み上げてきた将棋の奥深さにふれる感動が微笑ましい。
これまで将棋に感心のなかった悟だが、後輩の南條に教わって従妹の双葉にリベンジを挑むうちに、いつの間にか将棋に夢中になっていく。
南條も、双葉も、将棋を好きな気持ちは本当だが、将棋を通じて悟との仲を進展させたい下心もあったりして、恋のライバル同士の対局も熱い!
いくつになっても勝てば嬉しいし、負ければ悔しい。真剣勝負に年齢や経験の差は関係ない。
いまテレビやネット上でもニュースを聞かない日はないほどの将棋ブーム。自分もはじめてみようかなと悩んでいる方も多いはず。将棋の素直な楽しさが伝わってきて、なんだか自分もやってみたくなる。将棋の格言にも詳しくなれる作品です。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲優詩)
本作は将棋を題材にしたラブコメ小説である。将棋初心者の主人公が、双葉と真菜という2人の将棋好きな女性からアプローチされる…といったストーリーで、主人公含めて3人とも魅力的に描けており、将棋を知らない人でもそれなりに楽しめる内容になっている。だが、章のタイトルを将棋の格言にしたり、登場人物が日常会話に将棋用語を使ったりと、将棋を知っていればより楽しめるのは間違いないし、作者の想定する読者層というかターゲットも将棋を知っている人間だと思われる。読んでいて思ったのは、ラノベでいう挿し絵のような感じで、「局面図」が欲しいなぁ…ってこと。作中で対局中の局面の描写がかなり詳しく書かれていることもあって、双葉や真菜たちが指している将棋を実際に見てみたくなるのだ。そういう理由で、この小説が本になるとしたら将棋の本かな…と妄想してしまった。