からくり仮面

 毒の沼地や底無し流砂を隔てて、数百メートル離れた飛び地同士で交わされる糸電話。それが、読了の第一印象だった。初歩的な演出論では、主人公は主体的に行動すべしとされる。本作でのそれは出だしから全て受け身で、にもかかわらず読者をぐいぐい引っ張っていく。主人公の流儀に従うなら、主人公にびた一文も払わぬ読者の為に粉骨砕身している。ゼニカネ以外に関心のない主人公がいつの間にかパラダイムシフトを起こした時、糸電話はスマホとなり、どこなりと主人公の望む場所へ本人自身を連れていく。

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