魂無き狩人、極彩色の都を駆ける

神が魂を下賜し、死者の復活が約束された世界。
魂を失った『ニング』は罪人とされ、人間の社会で生きることを許されない。
そんな『ニング』でありながら、同族を狩り続けるジュイキンが主人公の中華風ダークファンタジーです。

卓越した描写によって豪華絢爛かつ混沌とした世界に一気に引き込まれてしまいました。
独特の死生観に基づいた風俗の構築は圧巻の一言。
時折挟まれる煌びやかな街の様子や、そこで暮らす人々の息づかいもリアルに感じられます。
世界観は丁寧に練り込まれ、まるで自分もその作中世界を歩いているかのように生活感や空気までが伝わってきました。

戦闘描写もまた無駄がなく、立ち会いの迫力が伝わってきます。

登場人物も魅力的で、初めは抜き身の刃のような鋭さを持っていたジュイキンが天真爛漫な相棒グイェンと出会ってからの変化が微笑ましく、そしてどこか切ない。
そして異端児として生まれたグイェンはあどけないながらも、
煌びやかさの中に暗闇を抱え込んだ世界をまっすぐに捉えている様にはっとさせられます。

もう二度と会うことはないと思っていた兄との再会、ニングのテロリスト集団、そしてジュイキンの心臓。
謎は深まっていくばかりで、今後も目が離せない作品です。

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