三千年生きた彼女は、尻尾と職歴がむやみに多い、残念でちっぱいなお狐様。

 九尾の狐。
 それは古代中国、殷王朝では妲己、古代インドマガタ国の暴君・斑足王の妻華陽夫人。
 そして日本では、平安時代末に鳥羽上皇から寵愛を受けた玉藻の前のこと。
 討伐隊に追い詰められ、那須に逃げ込み自らを石化して、殺生石と化した伝説の妖怪。というのが定説です
 様々な漫画やゲーム映像作品のモチーフにもなっている知名度が高い妖怪。

 ……ですが、この作品では、コンビニのアルバイト店員から始まり、生命保険の勧誘、ピザの宅配、アイスキャンディー売りと様々な職種を渡り歩いています。
 そのどれもがクビ。ささいな、どころかとてつもない思い込みで辞職を勧告というかほうりなげられます。
 それでもすぐさま転職、なんとか渡り歩いています。

 そんな彼女にかち合うのが、主人公兼語り部の桜。
 普段派遣のIT業で仕事してますが、行く先々でお狐様に出逢う羽目に。
 メインの登場人物が二人(?)という制約の中、ワードチョイスと会話の妙、そして一話完結できっちりオチがつく構成でサクサク読み進められます。
 ケモ耳もふもふ、それにちっぱいに全く興味を引かない主人公。
 それに対して古式ゆかしいというか、昭和テイストの口調で構って貰いたがる九尾の狐。
 読み進めていくとわかる、タイトルのダブルミーニングにも注目。

 語彙の多さやトークのキレが光る、コントテイストのラブコメをどうぞ。

 (三部があのサブタイトルなら、4部は海に近くて、牛タンの味噌漬けが名産の街が舞台になるのかしら……(-_-).。o○0〇

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