抜群の完成度を誇るホラー中編、是非御一読あれ!

 読者諸兄姉は『レッドアイ』と呼ばれるカクテルを御存知だろうか。
 簡単に説明すると、トマトジュースのビール割りである。
 本作ほどレッドアイの喩えが似合う作品もあるまい。

 本作はホラーと相性の良い様々な要素が巧みに取り入れられている。
 例を挙げると、人里離れた山奥の村、奇妙な言い伝え、主人公の凄惨な過去などなど……。

 それら要素が絡み合いストーリーが加速して行く様は、最早見事としか言いようがない。
 また作者の流麗で奥深い筆致は、つい止め時を失ってしまう程に快く後を引くものになっている。

 本作に明確なクトゥルー神話用語は無いものの、神話ファンはすぐにアレの事だな……と推察できるはずだ。
 和風にアレンジされた極上のクトゥルー神話を楽しめる事を保証しよう。




 あ~、ビームが美味い季節になって来た。
 今日は作品にちなみレッドアイを作ってみよう。

 実は、グラスの底から卵黄が見えて赤い目のように見えるのが名前の由来であるという。

 本来は生卵を加えるそうなので、コショウやタバスコで味付けしてみる。
 一応グラスの底から覗いてみたが、特段赤い目には見えなかった。
 では行きます。

「ゴクッ……ゴクッ……ぷは~~~っ!」

 飲料部分は好みだが、生卵は正直気持ち悪い。
 さっさとハイボールで口と味覚をリセットしよう。


 ……、……。


 ん? ついうたた寝してしまったか。
 もう遅い、歯磨きして寝よう。

 洗面所で歯を磨いていると、鏡に何か映ったような気がする。
 ホラー映画じゃあるまいし、と後ろを振り返ったその先には、黒い着物を着た小柄な少女がいた。

「ち、血眸様っ⁈」

 血眸様の右眼が赫(あか)く輝くと、乱杭歯だらけの大口が迫ってきた――。



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