最後まで読み終えても、この深い闇と絶望から逃れることはできない。

祖母の逝去をきっかけに、幼少の頃を過ごした村を訪ねた主人公・一可の周りで、不可解な出来事が次々と起こる。
一可は村の伝承・血眸さまの謎を追ううちに、やがて底知れぬ闇の中へと踏み込んでいく。

ひたひたと迫ってくる恐怖、人物名や村の成り立ちまで精緻に練られた設定、息もつかせぬ構成のうまさ、ミステリ要素、どれをとっても高水準で最後まで読まずにはいられません。
ある種の美しさすら感じられるラストは圧巻の一言です。鳥肌立ちました。
グロ・ホラー・残酷な描写はどうしても駄目、という方以外にはぜひ読んでほしい作品。

民間伝承・民俗学・ミーム・バイオインフォマティクスといった単語が気になる方は、きっと読んで損はないはずです。

読んでいるあいだ、一可と共に謎を追いかけるうちに、知らず知らず闇の奥へ奥へと誘(いざな)われていくような感覚を覚えました。
そして読み手は、彼が経験した地獄のような絶望でさえも、ただの序章にすぎなかったのだと最後に愕然と悟るのです。

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